日本マーケットには大きく2つのセグメントがある
「このたび銀座本店がリニューアルオープンできたことは非常に喜ばしい。私たちのクリエーティビティー、テクニック、特別性、非常に洗練されたイメージ、そういうものをすべて含めたメゾンのアイデンティティーを具現するパーフェクトなブティックになった」
満足げにそう話すアルバン・ベロワー氏。ラグジュアリー業界でおよそ15年のキャリアを持つが、日本でのビジネスはこれが初めてとなる。就任後にまず着手したのは、日本のマーケットを理解することだった。
「ヴァン クリーフ&アーペルのスタッフをはじめ、パートナー、百貨店、メディア、そして顧客まで、これまでわれわれに貢献してくれた人々にとにかく会って話を聞きました。その目的は日本でのわれわれのメゾンの位置付けを理解し、市場を分析すること。そして今後の戦略を立てることです。
ヒアリングの結果、日本には2つの大きなセグメントがあると分かりました。1つはラグジュアリー業界の入口、エントリー・マーケットとでも言いましょうか。代表的なターゲットが若いカップルです。婚約・結婚指輪のマーケットは非常に大きく、またアクセサリー的な普段使いのジュエリーもここに含まれます。
そして2つ目のセグメントがもう少しハイエンドのマーケットで、いわゆるハイジュエリーと呼ばれるものがメインになります。こちらはそれほど大きなマーケットではありませんが、ポテンシャルが高く、今後開拓の余地があるマーケットだと捉えています」
現場の生の声ほど信用できるものはないということだろう。日本でのビジネスが初めてとは思えないほどベロワー氏のマーケット分析は的確に思われる。世界的に見ても日本ほど一般大衆にまで高級ブランドが浸透している国は珍しく、その一方で最高峰のクラフツマンシップや洗練された美意識、無二のクリエーティビティーを理解し、それを手にできる富裕層がいる。宝飾や時計のフェアでは高額なものから売れていくなどという現象も起きていると聞く。そして、今後ベロワー氏が重視するのもこのハイエンドのマーケットだという。