ファミリービジネスの先に見る夢

メイランファミリー。MELBホールディングス設立から今年で10年。「人と人の距離感が近いこと」も家族経営のメリットであり、それがひとつのコンセプトを続けることにつながるという。現在、ブランドのCEOは息子たちが務める。メイラン氏自身はグループの方向性を決定するほか、各ブランドのプロダクト開発などにもかかわる。写真右上がH.モーザーCEOのエドゥアルド氏。

「この2年は前年対比40%の伸びとなり着実に再建に向かっています。ただ、ほとんどゼロからのスタートでしたから、もっと上を目指さねばなりません」

H.モーザーの経営が新体制になって3年。ようやく再建に向けた土台が完成し、これからが本番ということだろう。今後の動向も気になるところだが、それと関連して興味深いのが、メイラン氏が立ち上げたMELBホールディングスについてだ。じつはメイラン家とはスイス時計業界で古くから知られる名前。その現当主であるメイラン氏がMELBホールディングスを立ち上げた理由、目指すビジネスとは何なのか。

「家族経営の会社をつくりたかったのが一番の理由です。なぜ家族経営にこだわったかというと、1世紀半にわたって続いてきたメイランの名を後世に残したかったのがひとつ。もうひとつは長いビジョンでビジネスができるからです。巨大グループに属するブランドだと、株価等によって戦略が左右されたり、CEOが変わったりということが簡単に起こり得る。その点ファミリービジネスというのは、ブランドや会社に責任を持って何代も続けていくという前提のため、長期的なビジョンが立てられるのです」

MELBとは、ファミリーネームのメイラン(Meylan)と、3人の子ども(Edouard、Leonore、Bertrand)の名前の頭文字を取ったもの。現在、MELBホールディングスでは、H.モーザーのほかにオートランスという新進気鋭の時計メーカーを保有するが、いずれもファミリービジネスの強みを生かし、堅実なプランを打ち出す。

「今後3~5年は、今ある2つのブランドに集中したい。現在はH.モーザーが年産1000本程度、オートランスが年産300本程度ですが、3年後にはそれぞれ3倍程度を目指します。その先はブランドを増やす可能性もありますが現時点では未定です。さらに将来的にはメイランという名前のブランドをつくりたい。これは息子たちに託す夢かもしれませんけどね」