観光客を九州全域に分散誘致するためには、交通機関との連携プレーは欠かせない。JTB九州は2014年からJR九州と連携、九州を周遊する豪華寝台列車「ななつ星in九州」を初めて訪日外国人専用列車としてチャーターして好評を博した。

また鉄道路線、バス路線で九州の地域交通の担っている西日本鉄道(以下西鉄)とも連携、今年2月から福岡を起点に九州各地をめぐるバスツアーなど訪日外国人向け商品の販売を開始した。

「JR九州さんは『ななつ星in九州』の外国人比率を50%にするという目標を掲げられている。その先駆けとして外国人専用チャーターを実施させていただきました。西鉄さんとは今後増加が見込まれる外国人の個人旅行者をターゲットにしたバスツアーを主体にコラボレーションしています」

JTBと西鉄が共同開発したバスツアーは今年7月から福岡県の『福岡よかとこ旅行助成事業』の助成対象となり、割引料金が適用されて一層利用しやすくなっている。

世界遺産、農業の六次産業化、素材を生かして観光資源に

訪日外国人のみならず、観光客を呼び込む力の源泉は、もちろん、それぞれの地域の魅力だ。

今年6月、長崎県にある端島炭鉱(通称「軍艦島」)、鹿児島県の旧集成館などが、「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録された。順調に運べば来年には長崎県の教会群、再来年には福岡県の沖ノ島と宗像大社が世界遺産に登録される。世界遺産という強力コンテンツをいかに活用していくか。

「世界遺産を結ぶ広域観光の取り組みも含めて重要なテーマです。長崎のキリスト教会群に関しては、五島列島に隠れキリシタンの遺跡や教会が残されていて、それを海上タクシーで巡る『キリシタンクルーズ』を2012年から先行して商品化しています」

今夏、熊本城下の観光施設、城彩苑湧々座を舞台に、少女舞踏団「花童」による公演「熊本城絵巻~清正公を寿ぎ、城下町衆が賑わう華舞台」が始まった。JTB九州はこの舞台の熊本城下での開催を企画、日本の伝統文化に触れられるコンテンツとして外国人観光客にも人気を博している。

また同じ熊本県上益城郡の山都町では地元の農業経営者を対象に、農業経営に観光の視点を取り入れた地域のリーダー人財づくりを目的とした「食農観光塾」をこの8月から開催している。

JTBグループが地域交流の課題の一つに掲げているのが「観光による六次産業化」。観光を媒介に一次産業、二次産業、三次産業が連携(掛け合わせて6)することで、新たなモノの流れやヒトの流れを作り出し地域経済を活性化するという考え方だ。食農観光塾でも「六次産業化」の視点からカリキュラムが組まれている。

「私たちがやっているのは新たな観光資源を作り出すことではない。すでにある素材を観光資源化すること。多様な産業が連携してそれぞれの強みを持ち寄れば、地域の新しい価値や魅力を創造できるかもしれない。これからも地域に根を張った人たちとともに、地域の“宝”を発掘、再発見して発信していきたい」

進化するJTBグループ<index>

第1回「地域の宝」を新たな観光資源に。「カントウ」のブランドアップを図る(JTB関東)
第2回合言葉は「オール関西」。事業パートナーと“走りながら”考える(JTB西日本)
第3回「観光アイランド・九州」 九州経済の活性化に向け、新たな価値や魅力を多様なパートナーとともに磨く(JTB九州)
第4回北海道新幹線の開業を見据え、観光による地方創生事業を開発し、全道で展開する(JTB北海道)