ビザ発給要件の緩和などにより、関西国際空港を利用して訪日する外国人旅行者が急増。京都、奈良など、エリア内に有数の観光資源を抱えるJTB西日本は、自治体を含め、事業パートナーと共に、地域の課題を見いだし、その解決に全力を挙げる。

「オール関西」で大同団結し
外国人旅行者の増加に対応

光山清秀
JTB西日本 代表取締役社長
関西国際空港内の関西ツーリストインフォメーションセンターにて。

大阪・心斎橋。道頓堀川にかかる戎橋界隈は平日でも夕刻前には人波でごった返しているが、近年、目立って増えているのが外国人旅行者の姿だ。

「10年前にも大阪で仕事をしていましたが、その頃には考えられないくらい海外からのお客様が増えましたね」

JTB西日本の光山清秀社長は活気づく関西エリアの現況をこう語る。

その玄関口は関西国際空港で、2014年度の外国人利用者数は前年比141%の699万人を記録。14年度には国内主要空港として初めて、外国人利用者数が日本人利用者数を上回った。

急増する外国人旅行者に対応すべく、今春の4月1日、JTB西日本は関西空港1階の国際線到着ロビーで、外国人旅行者専用の観光案内所「関西ツーリストインフォメーションセンター(KTIC)関西国際空港」の運営を開始。各国語に対応して、観光案内や各種交通パスを販売し、外貨両替サービスも行う。

昨年12月には大阪市内の心斎橋商店街に「KTIC心斎橋」をオープン。今年6月には京都タワー内にも3番目の拠点をオープンさせた。

「関西空港の施設運営は新関西国際空港株式会社のご理解あってのこと。一つの企業でできることは限られています。外国人のお客様の増加に対しては、大同団結して『オール関西』で取り組んでいきたい」

新関西国際空港株式会社の福島伸一会長も、「オール関西」での取り組みの必要性を強調する。

「JTBには地域に根差した取り組みを推進してきた歴史があります。インバウンドにおいても豊富な実績があり、世界中にネットワークを持っている強みがあるため、関西空港内の観光案内所の運営を委託しました。関西には個性的な街が多く、世界遺産などの観光資源も豊富。関西経済連合会が立ち上げ、JTB西日本も参加している広域観光研究会は、2020年までに関西へのインバウンドを800万人に増やす目標をまとめました。オール関西で連携できれば、それも夢ではありません」

光山社長は、連携の動きを加速させることの重要性を指摘する。

「外国人のお客様が急激に増加している状況では、走りながら考えるようにしないと。答えが出てから動くようでは間に合いませんから」

成田から入国して東京、大阪や京都を回り、関西空港から出国(またはその逆)するのが外国人旅行者に人気のゴールデンルート。だが最近は関西エリアをじっくり楽しむ滞在型や、関西を起点に他の観光地に向かう旅行者が増加。その人流の動線の変化をデータとして集積できるのもKTICの強みだ。

進化するJTBグループ<index>

第1回「地域の宝」を新たな観光資源に。「カントウ」のブランドアップを図る(JTB関東)
第2回合言葉は「オール関西」。事業パートナーと“走りながら”考える(JTB西日本)
第3回「観光アイランド・九州」 九州経済の活性化に向け、新たな価値や魅力を多様なパートナーとともに磨く(JTB九州)
第4回北海道新幹線の開業を見据え、観光による地方創生事業を開発し、全道で展開する(JTB北海道)