人流、物流あるところに
新規の事業あり

「JTBグループは旅行事業に基軸を置きながらも、『交流』という切り口を大切にしています。『人流、物流のあるところに事業あり』です。どうしたらそうした交流を作り出せるのか、われわれも自治体や事業パートナーの皆様とともに、日々、新規の事業にチャレンジしています」

その交流を生み出すものはマッチングの妙。その対象は人だけにとどまらない。2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本食や日本の食材に対する世界の関心が高まる中、JTB西日本では日本の農林水産物・食品の海外販路開拓支援事業にも乗り出している。

学識経験者や食農コンサルタント、物流事業者と連携、同社が主体となって「Japanese Foods Trade Fair」実行委員会を組織。昨年は香港とシンガポールで日本産品の個別商談会を開催して、大成功を収めた。今年度も香港、シンガポール、台湾での開催を予定している。

「事前に国内のサプライヤーと海外のバイヤーに綿密なアンケート調査を行い、『このサプライヤーとこのバイヤーならマッチングできる』という組み合わせをこちらで作ります。その上で個別商談会に臨んでいただくので、商談の成約や継続交渉を合わせるとその確率は非常に高いのです」

修学旅行の中心地で
仕掛けた新たな旅のカタチ

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それぞれのニーズを探り当て、あるいは掘り起こし、人と人、人とモノをマッチングさせて交流につなげる。JTB西日本では本社に地域交流ビジネス推進室を設置して、マッチングビジネスをいち早く展開してきた。東大阪市の町工場の「モノづくり」の現場を修学旅行の観光スポットに転化した旅行商品(「地恵のたび」)などは典型的な成功事例である。

JTBグループの新たな取り組みは、関西から生まれることも多いという。

「進取の気風というんでしょうか。事業化する着眼点や構想力には、関西独自の感覚があるように感じますね。そうした関西ならではの特徴を生かしていきたい。マッチングビジネスの根底にあるテーマは地域の課題解決。東大阪の事例もそうです。修学旅行生を呼び込むことが街の活性化につながって、モノづくり観光は定番化しています」

修学旅行の中心地、京都でも同社が仕掛けた新たなマッチングビジネスが動き出している。京都市と京都の大学(公益財団法人大学コンソーシアム京都)と連携した「京都B&S(Brother&Sister)プログラム」だ。

このプログラムでは京都を訪れる全国の修学旅行生や関西圏の校外学習生に対して、実際に京都の大学で学んでいる学生がガイド役となり、観光地や大学キャンパスを街歩きして、京都の魅力を直接紹介していく。

「常に新しい提案をしていこうという意識を持っています。修学旅行も新しい形を模索しなければいけない。B&Sプログラムでは年齢的に近い世代から通り一遍ではない京都の魅力を教えてもらえます。京都のファンづくりには、もってこいの企画ですね」

このB&Sプログラムは、15年度の予約だけで、すでに2000人を超えており、滑り出しは上々。JTB西日本のマッチングの妙はこれからも発揮されそうだ。

進化するJTBグループ<index>

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