新幹線の開業を控えた北海道。訪日インバウンドの増加を追い風に、訪れる外国人観光客も増加に転じた。一方で、旅行客の偏りは大きく、JTB北海道では、根室を中心とした道東でのエコツーリズムの提唱、道南でのクルーズ船の運航など、全道の観光振興を視野に、積極的な行動で活路を開こうとしている。

北海道新幹線の開業を控え二次交通を独自に開発

笹本潤一
JTB北海道 代表取締役社長
新幹線の開業を控え、多くの案件を手がけるJTB北海道の社内は熱気に満ちている。

2016年3月26日、いよいよ北海道民悲願の北海道新幹線が開業する。新青森―新函館北斗間の部分開業(札幌延伸は2030年度末予定)だが、東京~函館を約4時間で結ぶ超特急がもたらす経済効果に期待が集まっている。

「東京はもちろん、これまで北海道になかなか足を向けにくかった北関東や東北からのお客様がこれを機会に増えるのではないかとこちらでは期待されています。それに急増している外国人観光客の移動手段に一番使われているのがジャパン・レール・パス。時間に余裕があれば新幹線でいらっしゃる方もいるのではないでしょうか」

JTB北海道の笹本潤一社長はこう語る。北海道観光にとって明るいトピックスに違いないが、課題もあるという。現状、新幹線が乗り入れるのは道南まで。新函館北斗駅は1日最大1万人の利用客が見込まれているが、広大な北の大地に新幹線効果を波及させるには交通網の整備が欠かせない。

「北海道観光の大きな課題の一つは交通機関が不足していることです。利便性を高めるために、基幹の鉄道とバスなどの二次交通をいかに組み合わせていくかが重要。胆振(いぶり)、日高管内の18市町と経済団体等で作る『北海道新幹線×nittan地域戦略会議』と協力してわれわれが取り組んでいるのは、噴火湾を越えて海路で日高・胆振地方にお客様を送るクルーズのプロジェクトです」

15年の夏、nittan地域戦略会議は渡島管内の森町から噴火湾を横断し対岸の室蘭港に向かうクルーズ船のモニター運航を行い、JTB北海道も協力。陸路よりも時間短縮ができ、海上ではイルカ・ホエールウオッチングも楽しめる。クルーズの評価は上々で、実用化に向けてともに検討を続けている。

インバウンド増を追い風に地域経済活性化に取り組む


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雄大な自然や豊かな食など、観光資源に事欠かない北海道だが、バブル崩壊以降、観光業は厳しい状況が続いてきた。反転攻勢のきっかけは訪日インバウンド。北海道ツアーが雪の降らない台湾でブームになり、北海道の雪質の素晴らしさが口コミで伝わってオーストラリア人スキーヤーが大挙して訪れるなど、海外で認知が広がった。14年の外国人観光客数は150万人を突破、今や北海道知事が300万人を目標に掲げる勢いだ。

「目標達成にはいくつかの課題があります。一つは受け入れ体制。札幌市内のホテルは稼働率が90%を超えてきています。これはほぼ毎日満室という状況。札幌を中心とした道央にお客様が集中している限り、泊まるところがないから行かれないという話になってしまう。道央以外にも目を向けていただけるように業界全体で考えなければいけない。それから現在は中国を筆頭にアジアからのお客様が圧倒的に多い。割合でいえばまだ10%に満たない欧米のお客様を増やしていければ、より目標値に近づけると思います」

 

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