古くから海外に開かれた地、九州はいま内外の旅行客が福岡県に集中。この状況を打開すべく、JTB九州は南九州の空港も利用する海外とのチャーター便を就航させ、世界遺産を結ぶ広域観光も展開。交通機関とも連携しながら、九州全域の観光資源発掘に努め、地域の発展に貢献している。
九州発、タイとの2wayチャーター
古来、大陸や朝鮮半島との交流の玄関口であった九州は、地理的にも歴史的にもアジア、さらには世界とのつながりが深い。
「JTBグループは『交流文化事業』を掲げていますが、まさに世界と日本の橋渡し役として交流を生み出してきたのが、この九州の地です。私たちも九州とアジア、さらには九州と世界の架け橋となってさまざまな交流を作り出すことで、九州経済の活性化に大いに貢献してきたい」
JTB九州の古田和吉社長はこう語る。アジアとの近接性という同社の強みを生かした“交流”創出の典型事例が、2013年度からスタートしたタイと九州の2way(双方向)チャーターだ。
まずJTB九州が契約したタイ国際航空のバンコク発チャーター便でタイ人観光客の日本ツアーを催行し、九州各地を周遊してもらう。一方で九州の空港に到着したチャーター機の折り返し便には日本人観光客が乗り込んで、タイ観光ツアーに向かう。
「もともとは日本旅行業協会九州支部とタイ旅行業協会の相互交流の一環として始まったチャーター商品ですが、現在は私どもで定番化しています。インバウンドの急増で日本のお客様も海外のお客様も航空座席が取りにくい状況になっていますので、このようなチャーター機のフル活用は意義があると思っています」
地域の交通機関と連携してお客様を九州全域へ
2013年6月、九州7県及び福岡市が共同申請していた「九州アジア観光アイランド総合特区」が政府の成長戦略の一環である総合特別区域法に基づいて認定された。
「観光アイランド・九州」として、成長するアジアマーケットの観光客を呼び込み、観光需要の喚起と消費の拡大を通じて、地域経済の活性化を図り、ひいては観光立国の推進に貢献することがこの総合特区の目的だ。
しかし、特区の整備を上回る勢いで九州を訪れる外国人観光客は増えている。2014年の九州の訪日インバウンドは前年から一気に100万人増えて167万人に達した。
「九州全体でインバウンド効果を享受できているかといえば、そうではない。やはり北九州エリアに集中しているのが現状です。外国からのお客様のみならず、祭りやイベントで全国からお客様がいらっしゃる。出張仕事で福岡にいらしてもホテルが思うように取れない状況が続いているのは、決して好ましいことではない。われわれ旅行会社はもっと知恵を絞って、中九州や南九州にお客様が分散していただける手立てを考える必要がある」
宮崎県・青島グランドホテルの冨森信作社長は、今後の展開に期待する。
「JTB九州の地域活性化プロジェクト『新九州物語』では、10月から宮崎県と大分県を対象とし、広域に周遊するしかけを展開してくれています。国内、海外からのお客様が、これまで以上に南九州も含めた九州全域に周遊いただけるように期待しています」
※「感動の瞬間(とき)」(R)は(株)JTBの登録商標です。
進化するJTBグループ<index>
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