所有する土地での賃貸住宅経営で十分な収益が得られるのであれば、それは相続税対策の有力な選択肢の一つになります。借り入れして賃貸住宅を建築した場合、それを負債として計上することもできるため、その点でも資産の圧縮が可能。相続税の節税につながります(下の図参照)。


曽根恵子氏作成の資料より
──そのほか、土地活用の関連で知っておいた方がいいことはありますか。

【曽根】所有する土地によっては、資産の組み換えも検討すべきです。立地条件などにより収益を生みにくい不動産は売却し、賃料収入が見込める不動産に買い替える判断も必要でしょう。実家など思い入れのある不動産を手放すのは勇気がいりますが、譲ってほしいという人がいれば、その人に活用してもらうのがベターです。

また、相続に関係する人全員できちんと話し合うことも忘れずに。不動産は分けづらいものです。家族で分割方法などを話し合い、結果を遺言として残しておくことが大切です。そして、早めに取り組みましょう。親が認知症になる可能性もゼロではなく、本人の意思確認ができなければ話し合い自体ができません。認知症と診断されても、自宅の売却などはできますが、家庭裁判所の許可が必要になり、手続きが大変。最近では、子どもの世代である40~50代が、80代の親の現状を認識し始めて、私たち相続コーディネーターのところに相談に来る事例も増えています。

正しい知識と
時代に合った発想を

──賃貸アパートやマンションを建てようと考えたとき、パートナーとなる事業者選びは重要です。見極めのポイントについてお願いします。

【曽根】事業者の姿勢は、各社ごとに特徴がありますが、まず建築ありき、借り入れありきではなく、相手の立場に立った提案をする会社選びが大切です。そして、目先の収益だけではなく、周辺の土地と比較してその土地の将来性を踏まえた提案をしてもらえるかという視点で選びたいものです。

例えば賃貸アパートを建てただけでは節税にはならないことがあります。相続する時点で実際に借りている人がいることが重要です。空室であれば土地は更地評価になり、節税効果が得られないことがあるのです。ローンを返済しているうちは、高い入居率を確保していても、返済が終了すると案外空室が目立ち始めるという例は少なくありません。賃貸住宅は、継続的な満室経営が基本。パートナーとなる事業者がこれをどれだけ意識しているか見極めましょう。

──最後に、これから土地活用を始める人へメッセージをお願いします。

【曽根】正しい知識と時代に合った発想を持つことが大事でしょう。例えば知識について、賃貸住宅経営を始めたら確定申告をしますが、建物の躯体と設備を分けないで申告する人が多い。躯体と設備は、それぞれ償却年数が異なるので、分けて申告すれば支払う税金が変わります。専門知識を深く勉強する必要はありませんが、やはり一定の経営感覚は持ちたいものです。

そして繰り返しになりますが、今の時代、土地はただ持っているだけではダメで、収益を生んでこそ資産と呼べます。それを意識して、最善の策を検討してほしいと思います。