やり方しだいで大きな差がつく税金対策──。土地活用の専門家で、相続コーディネーターの曽根恵子さんに、押さえておきたいポイントについて聞いた。

「土地をただ持っているだけでは今の時代、資産とは呼べません」

曽根恵子●そね・けいこ
公認 不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
株式会社夢相続 代表取締役
出版社勤務後、不動産会社を設立。相続コーディネーター業務を開始。これまで1万2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提唱し、安心で円満な夢相続の実現に取り組んでいる。

 

土地を上手に活用して
評価額を圧縮する!

──現在、「土地」という資産を取り巻く環境が変化しているように思います。曽根さんは、どのようにご覧になっていますか。

【曽根】土地が「所有するだけで値上がりする」という状況は、バブル期以降、一部を除きほとんど見られなくなっています。一方で収入を生まない空き地も、固定資産税はずっと負担していかなければなりません。
加えて今年5月には、「空き家対策特別措置法」が全面施行されました。これによって、市区町村が「管理が悪く倒壊の危険性がある住宅」と判断した場合、その建物は強制的に撤去される可能性があります。そうなると土地の固定資産税の軽減措置を受けられない。土地に住宅が建っていれば、200平方メートル以下の部分については固定資産税が最大6分の1になりますが、ひとたび建物が撤去されてしまうと、このメリットがなくなるわけです。もはや所有するだけの土地や空き家はリスク。収益をもたらす資産に生まれ変わらせる必要があります。

──活用しなければ、不動産としての価値を引き出せないということですね。

【曽根】そうです。さらに、将来の相続税を考えるなら、すぐに具体的な対応をしたいものです。今年1月から、相続税の最高税率は50%から55%に引き上げられ、基礎控除は従来の60%に引き下げられました。相続税対策には、大きく二つの方法があります。まず、子や孫などに贈与して財産を減らす方法。次に、持っている不動産の評価額を減らす方法です。土地であれば、上手に活用することがまさに評価額の圧縮につながります。

──土地活用が相続税対策になるわけですね。

【曽根】「土地は値上がりする」というかつてのイメージをお持ちの方のなかには、土地を守るために貯金をして、「相続税は現金で払えばいい」という考えも根強く残っています。しかし、現在、預貯金はほとんど利息を生まず、基本的に節税はできません。やはりその点は押さえておくべきだと思います。

親の認知症なども
相続にかかわる問題に

──土地活用の一つとして、賃貸住宅経営があります。節税の仕組みについて教えてください。

【曽根】例えば現金が1億円あれば、その相続税評価額は額面どおりです。一方、不動産は条件や活用法などによって評価額が異なってきます。自宅のように自分で使っている「自用地」の場合、土地は路線価などで決まる評価額の100%で計算されますが、建物は固定資産税評価額がそのまま評価額になるため、実際にかかった建築費の40%~60%になります。

ここで、自分の土地を誰かに貸している状況を想定します。この場合、すぐに明け渡してもらえない事情が考慮され、土地の評価額は下がります。借地権割合は地域によって異なりますが、30%~90%です。

そして、自分の土地に自分名義で賃貸アパートやマンションを建てている場合も、その土地は「貸家建付地」となり、評価額を減らせます。