土地活用、賃貸住宅経営の成功・失敗の分かれ道はどこにあるのか。これまで土地活用のコンサルタントとして、数多くの課題やトラブルを解決してきた谷崎憲一氏にアドバイスを聞いた。
入居する人たちにどんな暮らしを提供するか
具体的にイメージしてほしい

谷崎憲一●たにざき・けんいち
株式会社パワーコンサルティングネットワークス
代表取締役


デベロッパー、ゼネコンにて土地活用コンサルティングに従事。その後、コンサルティング会社役員を歴任し、独立。不動産コンサルティング、相続対策、賃貸管理などを手がける。

 

ますます高まる
事業計画の重要性

──近年、経済情勢は刻々と変化しています。土地活用を取り巻く環境について、どのように見ていますか。

【谷崎】震災以降の建築需要の高まり、円安やインフレ、海外資産の流入。多様な要素がありますが、総じて堅調といえるでしょう。一つ大きいのは、超低金利の継続。これが土地活用を行う人に具体的なメリットを提供しています。賃料が収益となる賃貸住宅経営は、金融機関から見て比較的安定した事業であり、融資対象として有望なのです。

ただ一方で、現在はバブル景気のときのように「土地さえあればお金が借りられる」という時代ではありません。銀行も、土地の担保性、オーナーの属性、そして賃貸住宅経営の事業性をよりシビアに審査するようになっています。その意味では、事前のマーケティングや事業計画の重要性はますます高まっているといえるでしょう。

──マーケティングや事業計画で、押さえておくべき点はありますか。

【谷崎】一言でいえば、“ビジョン”を持つこと。これはどんな事業にも共通しますが、賃貸住宅経営においても、「それによって、どんな価値を提供するのか」を明確にすることが重要です。

基本的な部分では、震災以降、賃貸住宅にも耐震や耐火の性能が強く求められるようになりました。また、防犯やセキュリティについても、現在の入居者は非常に気にします。こうしたニーズを満たした上で、他の物件とどう差別化するかがマーケティングであり、事業計画です。差別化については、間取りやインテリアの工夫、ペット共生、家庭菜園付きなど、多様な手法があるでしょう。いずれにしても、どんなターゲット層に、どんな暮らしを提供するのかをイメージすることが独自性の高い物件づくりにつながります。

パートナー選びの
ポイントはどこに?

──確かなプランを立て、それを実現していくには、やはり専門の事業者の存在が大事になりますね。

【谷崎】おっしゃるとおり、ハウスメーカーや設計会社、コンサルティング会社の知見、ノウハウの活用は不可欠です。では、どのようにして最適なパートナーを見つけるか。ポイントはいろいろありますが、一つにはその提案力が重要な指標になるでしょう。

例えば所有している土地が、本来、高齢者向けの賃貸住宅に適したエリアにあったとします。しかし、出会った事業者がそのノウハウを持っていなければ、ファミリー向けや単身者向けのプランしか上がってこない。こうしたミスマッチに陥ってしまうと、後で取り返しが付きません。事業計画の段階で、Aプラン、Bプラン、Cプランと幅広い提案をしてくれるかどうか。これは事業者の実力を見極める目安となるでしょう。