資産を取り巻く環境が着実に変化するなか、その運用に取り組もうとするなら、どのような視点が必要になるのか。ファイナンシャル・プランナーで、自らも投資を実践する北野琴奈さんに聞いた。

お金に意味を
持たせることが大事

北野琴奈●きたの・ことな
日本FP協会 CFPファイナンシャル・プランナー

津田塾大学英文学科卒業後、メーカーにて営業・企画・マーケティング業務に携わる。その後、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。自らも金融商品、不動産による資産形成・運用を行う。日本ソムリエ協会認定の資格ワインエキスパートでもある。
──円安やインフレ基調などを背景に、資産運用が話題に上る機会も増えています。ビジネスパーソンの意識の変化などを実感されますか。

【北野】例えば比較的年収の高い方でも、投資や貯蓄を計画的に考えている層と、多忙のためか無関心な層と、二極化が進んでいるように感じます。

ただ、投資を行っている層でも、数カ月程度の短い期間で成果を求め、ストレスを抱えている方が案外いらっしゃいます。日々、結果を問われるビジネスの世界で生きているからか、即時性を求めてしまう……。もちろん投資においても、その時々の適格な判断は重要ですが、一方で中長期的な視点を持ち、日々の動きに一喜一憂しない姿勢も欠かせません。

──短期的な視点になりがちなのは、やはりリスクをふくらませたくないという意識があるのだと思います。

【北野】確かにそうですね。誰しも元本を大きく割り込むことは避けたいものです。しかし、投資については悪いニュースが大きく報道されるため、リスクに対して過剰に反応してしまっている部分があるのではないでしょうか。

また、投資においてリターンを得ることは大事な要素ですが、それが人生の目的のすべてではないはずです。むしろ、実現したい目的があるから、そのためにお金が必要というのが本来でしょう。投資や資産運用では、漠然とお金を増やそうというのではなく、きちんと「お金に意味を持たせる」ことが大切。未来をしっかりと見つめて、夢や目標をかなえるためにどうすべきかを“逆算”して考えるスタイルが重要になります。

──以前から「逆算」の大切さを発信されていますね。

【北野】実は私自身、20代の頃まではその時々を楽しみ、あまり先のことを考えずに過ごしていました(笑)。しかし30代を迎えたあたりから、将来について考え、このままでいいのかと不安も覚えるようになってきた。

そうしたなかで、先を見すえて、そこを起点に今にさかのぼってみると、やるべきことが見えてきました。そして、やるべきことがはっきりすると、気持ちも落ち着いてきた。こうした経験から、私は逆算することをお勧めしています。

──人生設計がまずあって、その後に資産運用があるわけですね。

【北野】そう。大事なのは、ライフプランとマネープランをリンクさせることです。考えてみれば、マネープランなきライフプランというのはなかなか成り立たないのですが、案外別々に考えている人が多い。40代、50代ともなれば、健康面を含めていろいろと変化も出てきますから、より具体的に将来をイメージすることが求められます。またお金の話となると、年収のことを考える人が多いですが、長期的な視点に立つならば、運用することでお金を生み出す“資産”というものにも、もっと関心を持ってほしいと思います。

まず考えるべきことは
「何を」「誰と」「いつ」

──いま十分な収入があっても、それだけでは安心できない……。

【北野】あまり報道されていませんが、例えば2016年から給与収入が1200万円を超える会社員については、給与所得控除の縮小が予定されています。高所得者層に厳しい税制、施策は今後も増えていく可能性が高いでしょう。

そこで、逆算の発想でより計画的に考えてみようということなのですが、その基本は、「何を」「誰と」「いつ」を考えること。目標の実現時期を見すえ、そこに至るために今やるべきことを記していきます。

例えば「何歳にマイホームを購入する」という目標を設定したら、物件面と資金面から、「いつまでに○○をする必要がある」というように実際行動できるレベルまで分解してみる。あまり詳細にやり過ぎる必要はありませんが、具体的に表などにしていけば、現在の自分の立ち位置も分かり、モチベーションアップにもつながります。