カルロス・ゴーン氏就任後の日産自動車株式会社、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会、内閣官房官邸国際広報室などで、常に国際的な感覚を求められる要職を歴任してきた加治慶光さん。現在は、アクセンチュア株式会社でチーフ・マーケティング・イノベーターを務めている、「グローバル人」だ。「世界最大の総合コンサルティングファーム」として56カ国200以上の都市へ展開している「グローバル企業」アクセンチュア。その中で、日々奮闘する加治さんは、今の日本をどう見ているのだろうか?
「モノ作り」
プラス「発信」を
――現在、「グローバル化」が進んでいる背景を教えてください。
【加治】我が国は、1950年代から1990年代に、大きな成長を果たしました。それは「日本企業が作るモノ」が高水準で、世界的に高い競争力があったからです。
――日本企業は「いいモノ」を作って、それが売れていた。
【加治】「作りさえすれば」売れていた。だから、「コミュニケーション」や「マーケティング」、すなわち「作ったモノを発信」することの重要性に気がつかなかった。
――「発信することの必要性」を感じた経験はありますか?
【加治】日産自動車に勤めていた頃、「GT-R」というスーパーカーの担当をしていました。東京モーターショーで「GT-R」のブースには、中国やインドの技術者が「四角い箱」を持って集まっていました。
――「四角い箱」とは?
【加治】X線と超音波で、鉄板の厚さや作り方まで分かる機械なんです。その時に「日本の技術は必ず新興国に追いつかれる」と感じました。その後、東京オリンピック・パラリンピックの招致活動や、再び日産自動車に戻って電気自動車を世界に普及させる役割を担うのですが、「いいプランやモノを作るだけ」ではダメ。他国の企業や政府にきちんと魅力を伝えたり、議論や交渉ができないと売れない、と感じました。