しつこく希望を出し続けた

転職した当初は品質保証の部署にいたのですが、担当者として工場の様々なプロセスや醸造部門の現場を見れば見るほど、ビールを製造する現場のダイナミックさに惹かれていきました。

ビールの製造工場に行くと、何百キロという単位で麦芽が釜で仕込まれ、500KLを超えるような貯蔵タンクや発酵タンクが並んでいます。ものすごく巨大な設備が多くの人たちによって動かされ、たくさんの工程の一つひとつが積み重なり、時間をかけて最終的にお客様が手にする商品ができあがっていく。そのプロセスに携われる仕事ができたら、どんなにやりがいを感じられるだろう、という気持ちを抱いたんです。

昔は特にそうでしたが、会社は醸造の現場で女性が働くことをあまり考えていなくて、私がやりたいと思って手を上げても、「本当にできるの?」という雰囲気がありました。それでも毎年1回、3年後の希望部署を記入して提出するシートがあるので、諦めずに醸造担当への異動の希望をしつこく出し続けていました。それが功を奏したのかどうかはわかりませんが、神戸に新工場を建設するタイミングで地域限定をはずし異動がかない、1年後には、醸造担当への異動が決まったんです。

転勤できたことも嬉しかったですね。初めて地元の九州を出ることになったのですが、そのときは、不安よりもが期待のほうが大きかった。醸造への異動も願ってはいたものの初めて、でも、自分が強く望んだことであれば絶対に頑張れるだろうと思ったものです。

キリン R&D本部 酒類技術研究所 副所長 神崎夕紀(かんざき・ゆき)
1963年福岡県出身。大学院卒業後、バイオベンチャー企業を経て92年キリンビール入社、福岡工場品質保証担当。97年神戸工場品質保証担当へ異動し工場立ち上げに参加。98年神戸工場醸造担当へ異動。2006年より醸造担当部長。2013年より現職。

稲泉 連=構成 向井 渉=撮影