頭のよい子に育つ、脳の前頭前野の働きとは

では、「頭のよさ」に直結する前頭前野の発達を促すにはどうすればよいのか。その問いにお答えする前に、「前頭前野」とはどんな機能を持った部分なのかを、まず説明します。

前頭前野は、おでこのちょうど裏側に広範囲に広がる部分で、人間だけが特別に発達しています。ほかの動物はほとんど発達していません。ですから、人間ならではの「心」の働きがそこにあるのではないかと、50年ほど前からいわれていました。しかし、その正体については長い間、解明されませんでした。

それが近年、脳機能を画像化する研究が盛んになったことから、その役割が見えてきました。前頭前野は、一つのかたまりとして働いているわけではなく、部位によってさまざまな役割を果たしていることがわかったのです。その中で「頭のよさ」に関わる重要な場所が、2カ所あることがわかってきました。

一つ目が、「背外側前頭前野」という場所です。ここは、ものを考える、理解する、あるいは推理・推測をする、抑制する、判断するといった働きを担います。私たちが「知性」と呼んでいるもののコアとも言える場所です。この部分が発達することによって、どのような社会環境においても適応していける、基本的な能力が身につくと考えられています。

もう一つは「背内側前頭前野」と呼ばれる場所です。ここは、相手の気持ちを理解する、共感する、自分がどんな立場にいるのかを感じ取る、といった働きをします。

一つ目の「知的な能力」と二つ目の「対人能力」の両方がバランスよくそろうことで、いわゆる「賢い子」「頭のよい子」になるのだろうと私たちは考えています。

ですから、育脳で目指すのは、まさにこの二つの場所をいかに発達させるかということなのです。では、どうすれば前頭前野を発達させられるのか。まず、特別な教育や訓練が必要なわけではありません。どんな家庭でも、日常生活の中で少し意識していれば実践できることなのです。

つまり、大切なのは、子どもの前頭前野を刺激する習慣や家庭環境を整えることです。脳は、日々の生活の中で自然に形づくられていくものなのです。

人間の脳の構造

育脳にとって、特に重要な生活習慣とは

では、子どもの「頭のよさ」を決める前頭前野を発達させる習慣とはどのようなものなのでしょうか。まず、脳の発達は体が健康であることが基盤ですから、睡眠と1日3回の食事をしっかりとるという生活リズムが大切です。特に睡眠は、大人の生活リズムに合わせるのではなく、早く寝かしつけるなどして、親子の生活リズムは分けたほうがいいでしょう。

こうした生活リズムを整えたうえで、最も大切なのが、朝の習慣です。家族そろって朝ごはんを食べることで、前頭前野の発達が大きく変わることが私たちの調査からも見えてきました。

また、読書が前頭前野と深く関係していることもわかっています。特に、乳幼児期の本の「読み聞かせ」は、子どもたちの前頭前野を発達させるだけでなく、親子の愛着関係を築くうえでも非常に重要な時間であることがわかっています。そのほかに、日ごろの親からの声のかけ方も重要なポイントです。子どもに対してどのような声かけをするのか。その積み重ねが、子どもの前頭前野の発達や働き、ひいては「やる気スイッチ」の形成に影響します。

そしてもう一つ、お伝えしておきたいことがあります。それは、親子間に愛着関係を築くことの重要性です。共働き家庭が増え、2歳、3歳で保育園などの集団生活に入る子どもが増えました。子どもたちにすれば、家では王様やお姫様のように大切にされながら、集団の中では大勢の一人として扱われるわけです。このギャップが子どもたちにとってとても大きなストレスになります。だからこそ、「家に帰れば安心」「受け止めてもらえる」と子どもが思うことができれば、頑張れる子になります。親が子どもにとって“緊急避難基地”の役割を果たせるかどうかが、脳の発達に深く関わるのです。

しかし、ネット社会に生きる大人は誰もが忙しく、余裕を失っているため、子どもから完璧な信頼を受けることが難しい時代です。そのような中でも子どもとしっかり向き合い、愛情を持って接することで、子どもから絶対的な信頼を得ることが脳の発達には欠かせません。

※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。