「美しくなるための行動」が健康を損なう
ここまで読んで、「それなら美容整形やダイエット、化粧で見た目を良くすれば、死亡リスクも下げられるのではないか」と思った人もいるかもしれません。
しかし、ブルチャク博士は、その発想そのものに警鐘を鳴らしています。
論文では、極端なダイエットや危険な美容整形、不適切なサプリメントやステロイドの使用など、「美しくなるため」の行動が、かえって健康を損ない、寿命を縮める可能性があると指摘しています。
また、時代によって「美しさ」の基準は大きく変化してきました。
かつては豊かさの象徴だった体形が、現代では健康リスクと見なされることもあります。逆に、極端な細さや過度な筋肉も、医学的には必ずしも健康的とは言えません。
つまり、「社会が求める美しさ」に自分を無理に合わせようとすること自体が新たな健康リスクを生み出してしまう可能性があるのです。
見た目を変えようとして、かえって寿命を縮めてしまっては本末転倒でしょう。
本当に変えるべきものは何か
ブルチャク博士の研究は、「見た目が悪い人は早死にする」と単純な結論を導くものではありません。
この研究が示しているのは、外見によって受ける評価やストレスが、長い年月をかけて健康や寿命にまで影響を及ぼしている可能性です。
もしそうだとすれば、本当に見直すべきなのは、「見た目」で人を判断してしまう社会のあり方ではないでしょうか。
〈参考文献〉
(*1) Hamermesh, D. S. (2011). Beauty pays: Why attractive people are more successful. Mobius, M. M., & Rosenblat, T. S. (2006). Why beauty matters. American Economic Review.
(*2) Ling, L., Luo, D., & SHE, G. (2019). Judging a book by its cover: The influence of physical attractiveness on the promotion of regional leaders. Journal of Economic Behavior & Organization, 158, 1–14.
(*3) Bulczak, G. (2026). Physical Unattractiveness and Mortality in the United States. Applied Research Quality, Life
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。