ファンとのエンゲージメントが強固
従来の大作映画は、まず製作発表会見があり、公開2〜3週間前にレッドカーペットなどの大型イベント、公開初日には舞台挨拶が実施される。しかし、本作は声優や監督、プロデューサーによるこうしたイベントをいっさい行っていない。
代わりに、映画館でのキャラクターによるグリーティングのほか、上映前は作品内容と連動した新商品発売や企業コラボ、ポップアップストア、期間限定ショップイベントなどを実施。とにかくファンが作品およびキャラクターに触れる機会を多く設けた。
加えて、作品制作過程では、ありがちなタレントや俳優の声優起用をせず、映画主題歌や挿入歌にも売れっ子アーティストの書き下ろし曲を入れたりしない。ファンが知っている作品の世界観を決して崩さなかった。
セブン‐イレブンなど企業コラボ多数
一方、企業コラボはとてつもなく多かった。この6〜7月だけで、サントリー、東京スカイツリー、セブン‐イレブン、PARCOのほか、ユニクロ、マツモトキヨシ、CoCo壱番屋、オリオンビール、マクドナルド、Manhattan Portage、9090、リポビタンD、ドン・キホーテ限定グッズ、キッコーマン、チロルチョコ缶などなど枚挙にいとまがない。
しかも、セブン‐イレブンでは劇中にも出てきた「赤魚の煮付け」を販売するなど、それらすべてが今回の物語とリンクし、すべてのグッズやイベント一つひとつにファンを歓喜させるこだわりの造形やデザインなどの作り込みがあった。結果、大きな売り上げを作りながら、作品とファンのエンゲージメントを強め、双方をハッピーにしている。
要はIPビジネスに長けているのだが、その根底には作品とファンへの愛がある。もしかするとナガノ氏は、従来の商習慣やセオリーを顧みず、それを純粋にとことん追求しただけかもしれない。その結果のひとつがIPビジネスの成功だ。もともとビジネスを主目的にしていないからこそ、ファンの心をしっかりと掴むことができた。そんなことも思わされる。



