興行成績は『コナン』には届かず

その結果、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、初日3日間の興収22億4000万円の大ヒットスタートを切った。

この数字がどれほどの規模かというと、今年公開作品の同日間比で、『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の35億円、『トイ・ストーリー5』の24億1000万円に続く3番目だ。2022年の『ONE PIECE FILM RED』(最終興収203億3000万円)の土日初日2日間(22億5000万円)と同規模になる。先述のとおり、実写映画の『キングダム 魂の決戦』は超えた。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』
画像=TVerプレスリリースより Ⓒナガノ/2026「映画ちいかわ」製作委員会

一方、昨年の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(最終興収402億円)は55億2000万円、2020年の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(最終興収407億5000万円)の46億2000万円からは大きく離されている。

話題性でロングヒットするか?

出足の数字としては、大ヒットではあるものの、期待された『鬼滅の刃』シリーズほどではない。ただ、世間的な話題性は『名探偵コナン』『トイ・ストーリー5』よりも明らかに高い。特異な作品内容の感想や考察のほか、子どもを連れた親のリアクションや初見の観客の驚きぶりなどがおもしろおかしくSNSで広がり、観客の裾野をじわじわ広げている。

この先の興行がどうなるかはまだわからない。最終的に100億円は視野に入るが、その先どこまで伸びるかはこれからの情勢次第だ。現状の話題の広がり方からは、ポテンシャルは高いと感じる一方、すでにスクリーン数が徐々に減っている。そんななか、まずは2週目の成績で初速をどこまで維持できるかが注目される。

プラスの材料としては、封切りからわずか1週間で、口コミなどで話題が大きく広がっていることがある。その背景にあるのは、「食べる」「食べられた」というセリフを使って“殺すことの罪と罰”が語られる本作の異色の作品性だ。

「ココイチ×映画ちいかわ オリジナル島カレー」でもらえるオリジナルステッカー全4種(画像=プレスリリースより)
「ココイチ×映画ちいかわ オリジナル島カレー」でもらえるオリジナルステッカー全4種(画像=プレスリリースより)

原作漫画ファンは驚いていない

ただ、原作漫画からそれは描かれており、ファンにはよく知られていること。彼らは、映画館のスクリーンに映し出されるキャラクターたちの情感に心を奪われながら、そのシビアでダークな側面にも向き合って物語を楽しんでいる。

一方、『ちいかわ』のグッズが好きで漫画やアニメの内容は知らなかった一部ファンや、子どもの付き添いのほか、友人に連れられて鑑賞した“ミリしら”(「1ミリも知らない」の略でネットでよく使われる)層は、愛らしいキャラクターたちとダークな物語のギャップに打ちのめされる。一般的なホラー映画よりも恐怖を感じるかもしれない。

そんな話題の盛り上がりに興味を持った新たな“ミリしら”層が映画館に足を向け、その衝撃的な鑑賞体験を興奮混じりにSNSで綴り、さらに新たな層を呼び込む。そんなプラスのスパイラルが生じている。