原作者の強いこだわりが映画にも

また、『ちいかわ』のIPとしての特徴は、とにかく新商品や企業コラボグッズ、限定イベントなどが多いことがある。加えて、それらすべてが徹底してこだわって作り込まれ、手にしたファンを常に驚かせ、喜ばせている。作品とファンへの深い愛があるナガノ氏の確固たるポリシーと、決して揺るがない真摯な姿勢が反映されていることがうかがえる。

ファン層は、子どもたちや、かわいいもの好きの女性層が中心だが、おじさん年代も少なくない。前述のような作品性が幅広い層を引き寄せ、ナガノ氏との強い絆で結ばれたファンダムを形成している。

画像=プレスリリースより
『セブン‐イレブン×映画ちいかわ ちいかわと島の思い出、つくっちゃお!』PR発表イベント(7月15日)。写真左からハチワレ、ちいかわ、俳優の志田未来、セブン‐イレブン・ジャパン執行役員マーケティング岡嶋則幸本部長、うさぎ

劇場版になった「セイレーン編」とは

そんな『ちいかわ』初の劇場版アニメになる本作は、原作の「セイレーン編」と呼ばれる長編ストーリーを映画化している。

このシリーズ屈指の人気エピソードで、ちいかわたちは特別な島への招待状を受け取る。そこは限定島ラーメンやスイーツが食べ放題のうえ、簡単な討伐で100倍の報酬が得られるという。そんな好条件につられて島に渡り、つかの間のリゾート気分を楽しむが、そこに待ち受けていたのは、現在まで続く島民と伝説の人魚セイレーンの血塗られた怨念の歴史。ちいかわたちはその闘いに巻き込まれていく。

その物語のビジュアルは夏休み感がてんこ盛り。表面的には、これぞ夏に家族で観る冒険アニメという建て付けなのだが、そこには前述のような仕掛けが埋め込まれている。

そんな本作は、製作スタイルにも特徴がある。夏休み映画の大作でありながら、大手広告代理店が製作委員会に入らず、委員会の製作幹事はフジテレビでも東宝でもなく、企画会社のQTORY。同社は『ちいかわ』のライセンス管理などを担うスパイラルキュートと、『天気の子』『すずめの戸締まり』など新海誠監督作品で知られる企画会社・STORYが共同で設立した会社であり、クリエイティブ系企業が製作の中心になって舵取りをしてきた。

その結果、商業的な側面ではなく、作品とファンを最優先にする異例のクリエイティブファーストの製作進行になった。