スネ夫「責任がないとはいえない、叱ってくれ」
大人になればなるほど、うまい言い訳を考えたりと、駆け引きする方面にエネルギーを使うようになるせいか、素直に謝る気持ちや、いさぎよく謝るといった態度が置き去りになりがちかもしれません。
われらがスネ夫の謝り方はというと……、さすがですね。謝罪するどころか、最後にはホメられるという終わり方までしています。ドラえもんのシーンを見てみましょう。
広場でのび太とスネ夫がキャッチボールを楽しんでいます。スネ夫が大きく投げたボールをのび太が受け損ねてしまい、怖いおじいさん(編註:神成さん)の家の窓ガラスを「ガシャン」と割ってしまいました。
「ちゃんと受けないからだぞ!」とのび太を非難するスネ夫。そこへ怖いおじいさんが現れ、「こりゃ!」と竹刀でのび太を突然殴ります。
「ちがうよっ、スネ夫が……」と言い訳するのび太。一方でスネ夫は、一瞬で反省したような表情になり、怖いおじいさんに謝り始めます。
「そう、ぼくにもぜんぜん責任がないとはいえません。だから、ぼくはちっとも悪くなくても、いっしょにしかってください」
すると、怖いおじいさんはスネ夫の頭をなでながら、「えらい! さすがに、スネ夫くんはいさぎよい、男らしい少年じゃ」と絶賛しました。
『てんとう虫コミックスドラえもん 第18巻』小学館 第3話目「ひい木」
“自ら進んで謝る”ほうが絶対にいい
コミックスの絵柄を見るとよくわかるのですが、スネ夫は怒られる前と後で顔の表情がまったく違います。怒られる前は「素」なのですが、怒られるときは「反省している顔」を作っています。スネ夫は計算ずくで「進んで怒られて」います。「ここではいさぎよく謝ったほうがいい」と覚悟している様子がよくわかります。
まさに、スネ夫の謝罪力の高さがよく表れているワンシーンですね。謝罪するときは、他人に促されてではなく、積極的に謝るほうが、ポイントが高いに決まっていますよね! スネ夫はそこに気づいているから、きちんと謝って自分の株を上げました。
そして、「悪いことをしたのになぜかホメられる」という、いかにも彼らしい武勇伝まで生んだのです。
ひるがえって大人の世界ではどうでしょう。「謝罪」をめぐる過去のニュースでは、「スネ夫の爪の垢を煎じて飲ませたほうがいい」と思われることも多くあります。
釈明のつもりが言い訳に聞こえたり、態度が不誠実だと受け取られたり――企業にとっては謝罪会見ひとつで、廃業に追い込まれることもありえます。逆に言うと、「謝罪」を制するものは、その後の展開をリカバーできるということです。
先ほど引用したスネ夫の謝罪のセリフを振り返ると、とても理屈っぽいのですが、子どもだからこそ許されたのでしょう。何より、進んで謝るという点が一番評価されたのだと思います。
1942年岐阜県生まれ。1976年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。フルブライト交換留学生(ペンシルベニア州立大学)。富山大学人間発達科学部名誉教授。生涯スポーツ論専攻。教育学博士。ドラえもんアナリスト。登場人物が夢や悩みにどのように対応し、解決したかを考え、人生を豊かにする方法を模索する「ドラえもん学」を研究。主な著書に『「のび太」という生きかた』『「のび太」が教えてくれたこと』『「スネ夫」という生きかた』(アスコム)がある。
