母親が「本当に伝えたかったこと」

ステップ②その信念・価値観をゆるめ、本当の願いに戻る

ここでAさんは、初めて気づきました。

「私は、ずっと“自分より他人”で生きてきたんだ」
「ずっと自分を悪い子だと責めてきたんだ」

まずは、そのことを責めずに受け止めました。そうせざるを得なかった自分。そうやって、存在を守ってきた自分。その自分に、「つらかったよね」「たくさん我慢してたよね」「もう自分を大切にしていいよ」とやさしく寄り添っていきました。そして、問いかけました。

「本当に、ゲームをやめさせることが大切なのだろうか?」
「本当に、自分を後回しにすることが必要なのだろうか?」

少しずつ、これまでの信念を揺さぶっていきました。

すると、Aさんの中にこんな言葉が浮かんできました。

「人は人。私は私」「まずは、自分を大切にしていい」「ゲームとどう付き合うかは、この子の問題」。

そのとき、ようやく見えてきた本音がありました。

それは、「あなたに健康でいてほしい」「元気に毎日を過ごしてほしい」「一緒に笑顔で過ごしたい」という、シンプルな願いでした。

「親としての責任」「自分責め」という恐れから、ゲームをやめさせたいのではない。

私が安心するためにコントロールしたいのでもない。ただ、大切だからこそ、元気でいてほしい。それが、本当に伝えたかったことだったのです。

紙の家族の切り抜きを持つ手
写真=iStock.com/SewcreamStudio
※写真はイメージです

子ども自らゲームを早く切り上げ始めた

ステップ③本音ベースで伝え直す

その日、Aさんは初めて、こんなふうに伝えました。

潮田学『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』(KADOKAWA)
潮田学『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』(KADOKAWA)

「お母さんね、あなたに元気でいてほしいと思ってる」
「夜はしっかり眠って、体を大切にしてほしい」
「どうしたら、ゲームも楽しみながら、体も大事にできるかな」
「時間は、あなたが決めていいよ」
「お母さんは、先に寝るね」

それまでとは、まったく違う言葉でした。責める言葉ではなく、本音を伝える言葉。管理する言葉ではなく、信じて任せる言葉。

すると、不思議なことが起きました。その日から少しずつ、お子さんは自分でゲームを早めに切り上げるようになったのです。

最初は明け方までやっていたのに、12時になり、11時になり、やがて、夜9時や10時には寝るようになりました。自分で起きられて、学校にも行ける日が増えてきました。

子どもを動かしたのは、強い言葉や無理強いではありませんでした。親が、コントロールを手放し、本音でつながろうとしたこと。それが、子どもの中にある“自分で選ぶ力”“成長したい、良くなりたい”という欲求を呼び覚ましたのです。