親ができる関わり方5カ条
私がこれまで研究や現場で見てきた中で、共通して言えるのは、「能力をどう伸ばすか」よりも、「どうしたらその子が生きやすくなるか」を考えたほうが、結果的に力は伸びる、ということです。その視点から親ができる関わり方を五つのポイントに整理してお伝えします。
―1―熱中している子の邪魔をしない
まず、子どもが何かに熱中しているとき、邪魔をしないようにしてください。ギフテッドや発達特性のある子は、興味のないことには前頭前野がほとんど働きませんが、興味のある対象に対しては、驚くほど深い集中状態に入ります。このとき脳内では、報酬系を担うドーパミンが大量に分泌され、学習や記憶の定着、実行機能が最も効率よく働いています。
「そろそろやめなさい」
「先に宿題をやりなさい」
といった対応は、脳が最も成長している瞬間を中断させる行為なのです。発達障害を公表している米国の起業家イーロン・マスク氏が、疲れを感じずにプロジェクトに没頭できるのも、好きなことに集中している間、ドーパミンが多い状態で維持されているからです。
「今、この子の脳は最高の状態で育っている」
そう理解して、まずは見守ってやることも大切です。
―2―セルフコントロールを教える(人に迷惑をかけない)
「邪魔をしない」と言うと、「放任でいいのですか?」と聞かれることがあります。答えは「NO」です。大切なのは、活動を止めることではなく、「セルフコントロール(自己調整能力)」を育てることです。
幼少期のセルフコントロール力を測定したある長期的な研究では、この力が高い子ほど、将来的な経済状態や健康度が高いことが示されています。一方で、IQが高くても、セルフコントロールができない子は、能力を発揮する場がなく、埋もれてしまいます。ですから、ギフテッドや発達特性のある子にはまず、セルフコントロールを身につけさせることが非常に重要です。そのうえで大切なのが、行動の抑制ではなく、問いかけです。
「今、周りの人はどう感じているかな?」
「ここではどんな行動がよさそうかな?」
こうした問いが、前頭前野の実行機能を育てていきます。
―3―能力を褒めない
特別な能力を持つ子を褒めないと言うと意外に思われるかもしれませんが、脳科学的にはとても重要なポイントです。
「頭がいいね」「才能があるね」と能力を褒められた子どもは、「失敗=自分の価値が下がる」という認知を持ちやすくなります。その結果、失敗を恐れ、チャレンジを避けるようになるのです。
IQ187と報じられた韓国の天才少年が、世間から期待され続けたことで挑戦を避けるようになり、結果的に博士の学位取得に至らなかったという事例があります。周囲から能力を過剰に称賛された結果でした。褒めるべきは能力ではなく、「プロセス」なのです。
「よく考えたね」「工夫したね」「最後までやりきったね」と、本人の取り組みそのものや努力を評価する言葉をかけることで、失敗を恐れず挑戦し続ける思考パターンを持ちやすくなります。
―4―命令ではなく、選択させる
ギフテッドや発達特性のある子は、命令形の言葉に非常に敏感です。「やりなさい」とか「やめなさい」といった指示は、脳にとって脅威となり、恐怖・不安・怒りなどの感情を素早く察知する扁桃体が活性化します。そうすると、物事を考えたり判断したりする前頭前野の働きを低下させてしまうのです。
ですから、命令するのではなく、代わりに、選択肢を示してください。
「今やる? 10分後にする?」
「AとB、どっちにする?」
本人が選んだ瞬間、脳は受動モードから能動モードに切り替わり、自分から行動するようになります。
―5―親が「承認」の役割を担う
最後は、本質的なアドバイスです。ギフテッドや発達特性のある子は、集団の中で「理解されにくい」ため、周囲から認めてもらえない経験を積み重ねてしまいます。そのため、自己肯定感が持てない人が多いのです。自己肯定感は、「自己承認」と「他者承認」の両輪で成り立ちます。そこで親が他者承認の役割を担うことが非常に重要です。
「あなたを見ているよ」「存在そのものが大切だよ」といったメッセージを常に親御さんや祖父母などが本人に伝えることで、自己肯定感を持つことができ、やがては外の世界で踏ん張れるようになります。
ギフテッドや発達特性のある子どもは、大人になってから影響力を発揮するケースが多いことが知られています。また、幼少期にADHDであっても、成長過程で約8割の人は症状がなくなることも知られています。
こうした子たちの育て方は、よくタンポポとユリの花にたとえられます。タンポポは踏まれても育ちますが、ユリはちょっとしたことでも枯れてしまうため、丁寧なケアが必要です。しかし、きちんと育てればやがて大輪の花を咲かせます。ギフテッドや発達特性のある子どもは、ユリの花なのです。
私の目には、特別な能力を持って生まれた子たちは、社会にイノベーションを起こす使命を負っているように映ります。
子育てに絶対の正解はありません。ただ、脳科学が示す方向性はあります。それは「伸ばそうとしすぎないこと」「直そうとしすぎないこと」「信じて、待つこと」。
ユリの花を育てるように、丁寧に、根気強く、光を当て続けてください。それが、親にできる最大のサポートだと思います。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。

