孤立出産の加害者と被害者は一体誰か

産婦人科医でも孤立出産に関しては知らないことが多いのだ。同様に、殺人事件捜査の知見が豊富な警察組織が、必ずしも孤立出産関連の事件に精通しているわけではない。

本件では、起訴内容が殺人容疑から傷害致死罪に「格下げ」になった。それは、孤立出産の症例を数多く診てきた知見にのっとって書かれた蓮田氏の意見書を検討した結果、殺人罪では公判が維持できないと認めざるを得なかった、というのが実際のところではないか。

産む性の心身と孤立出産をめぐる繊細で複雑な背景について理解しないまま、未受診女性への加罰意識が作動して機械的に事件化した警察組織に対し、「事実を見る目をアップデートせよ」と反論した、産婦人科医。

神戸北署へ抗議書を提出に向かう蓮田氏
筆者撮影
神戸北署へ抗議書を提出に向かう蓮田氏

ざっくりと、本件の構図はこのようにまとめることができる。

警察・検察は女性を加罰することで誰を救おうとしているのか。

三宅 玲子(みやけ・れいこ)
ノンフィクションライター

熊本県生まれ。「ひとと世の中」をテーマに取材。2024年3月、北海道から九州まで11の独立書店の物語『本屋のない人生なんて』(光文社)を出版。他に『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(文芸春秋)。