素人校長、アイデアを募集する
教育振興課から学級減の知らせを受けて数日後、私は行動を起こすことにした。
このまま静観していても状況は変わらない。それならば、今できることをやるだけだ。私は、職員会議において来年度の募集定員が1クラス減となることを伝えた。
教員たちにざわめきが広がった。
「わが校はクラス減という大きな危機を迎えています。つきましては生徒が集まる魅力ある学校づくりのための取り組みについて、先生方のアイデアを募集したい(※3)と思います。お配りするアンケートに具体的な取り組み案を書いて提出してください」
私はそう説明して、アンケート用紙を配った。教員たちにもこの危機感を共有してもらいたかった。
数日後、教員たちからのアンケートが集まった。私は藁にもすがる思いで、校長室で一枚ずつ目を通していった。
※3 アイデアを募集したい
知識も経験も少ない私が勝手に発案しても誰もついてこないだろうし、それならば教員たちに考えてもらおうと思った。商業科の教員には本校出身者もいたので、わがこととして一生懸命考えてくれると思ったのだが……。
ボツの山の中で見つけた光
〔G高校を招いて、本校野球部と定期的な試合を開催する〕
関西地方にあるG高校は甲子園常連の強豪校だ。一時的には盛り上がるかもしれないが、圧勝されるのは目に見えている。これが魅力ある学校づくりにつながるとは思えない。ただ自分のやりたいことを書いただけではないだろうか。
〔早急におしゃれなカフェを建設するべきと思います〕
たしかにおしゃれなカフェを作れば、生徒が集まるかもしれない。しかし、県内では学校の統廃合が進められているこの状況下、本校にそのような大規模な投資が行なわれるはずがない。
〔生徒への指導がゆるく規範の乱れが感じられる。生徒指導をより厳しく行なうべき(※4)と思料する〕
すでに本校の生徒指導が厳しいことは広く知られており、それが生徒が集まらない大きな原因であるとも噂されている。さらに厳しくすることで生徒が集まると考える理由はいったいなんなのだろう。
〔商業の魅力の発信が足りない! もっと魅力のアピールを‼〕
「具体的な取り組み案を」と伝えているにもかかわらず、どうすればいいかがまったく書かれていない。あまりにも抽象的すぎる……。
即効性のある解決策などすぐ出るわけではないが、あまりにもピント外れな回答の数々にツッコミを入れながら読み進めることになった。
教員は浮世離れしているなどと言われる。学校は子どもという限られた集団と接する場で、社会の一般的な価値観から距離を置きやすく、ほとんどの教員が大学卒業後すぐに教職につき、そのまま教育現場にいるためだ。このアンケートにその一端を見た思いがした。
そんな中に目を引く回答があった。
〔今の本校の校則はあまりに厳しすぎる。おしゃれをしたい年ごろの女の子のために校則をゆるめてみたら、生徒が集まりやすくなるのではないか〕
やっぱりこれかと思った。
※4 生徒指導をより厳しく行なうべき
若い世代にもこのように考えている教員が多かったのは意外だった。「集団行動」(日本体育大学が始めた、規律行動をとるパフォーマンス)を体育祭でやりたいと提案した若手教員もいた。


