「悪口好き」の女子生徒にどう指導すべきか
本校の定時制課程は単位制のため、転入学はもちろん、中途退学者の編入学が可能だ。生徒は午後5時ごろに登校し、給食をとったあと、4限の授業を受け、午後9時に下校する。
定時制の生徒の中には昼間に働いている者もいるが、かつて見られたような「ガテン系の不良少年(※1)」や「家計を助けるための勤労少年」は少なく、多くはアルバイトをしている程度。卒業生の進路は、大学や専門学校への進学、就職、アルバイトなどで全日制とさほど大きな違いはない。
新学期が始まってしばらくしたころ、定時制の古川教頭が「1年生のクラスに問題がありまして……」と切り出した。校長はクラスの様子を直接確認できない分、毎昼、教頭から状況報告を受ける。そのミーティングでのことだった。
「入学直後の1年生のクラスがぎくしゃくすることは珍しくありませんが、今年はとくに女子生徒同士の関係がよくないのです。それもどうやらある1人の子が原因のようでして……」
定時制は1クラスで、1年生は男子4人、女子8人の計12人。担任が1人ずつ生徒に話を聞いたところ、不仲の原因は弓岡真由さん(仮名)という女子生徒であることが判明した。弓岡さんは「○○さんが悪口を言っていたよ」「××さんはあなたを嫌ってる」などとクラスの女子生徒それぞれに吹き込んでいたのである。
定時制にはおとなしく、素朴な性格の子が多い。多くの生徒がその言葉を信じ、クラス内に不協和音が生まれてしまったのだ。古川教頭からは、担任が弓岡さんの母親に話を聞くことになった、と報告を受けた。
このように、校長である私のもとには日々さまざまな報告があがってくる。とはいえ、自分が直接対処できるテーマはさほど多くない。とくにクラスの内部のことや、生徒の個人的事情については、教頭からの報告を受けるだけだ。
※1 ガテン系の不良少年
本校では定期的に卒業生(OB、OG)を招き、話をしてもらっていた。ある日の「講師」は40代の女性で美容院経営をしている人だった。彼女は最初に入学した全日制の高校が合わず、1年後に本校の定時制に入学したところ、同級生は金髪やリーゼントの不良少年少女ばかりだったらしい。そういう時代だったのだ。入学式の翌日、駐輪場近くの喫煙所でタバコをふかす金髪集団に遭遇し、怖気づいたものの、「どこから来てるの?」とやさしく尋ねられて仲良くなり、楽しい4年間をすごしたとのことだった。


