若者は安定感を求めている

高市首相は、理想やイデオロギーをめぐる空中戦は絶対にしないだろう。そうした安定感が若者の心をつかんだことは否めない。

ロシアによるウクライナ侵攻、生成AIの急速な進展、軍事的にも経済的にも社会的にも、いま世界は激動期にある。若者はこうした変化の渦に否応なく巻き込まれており、先行きが見えない。

そうしたなかで年配者が繰り広げるイデオロギー闘争に、若者はあまり関心がないようにみえる。大部分の若者は、旧態依然とした社会はもちろん拒否したいが、おじさん世代によるイデオロギー闘争にも巻き込まれたくないと考え、「安定感」を欲しているように見える。もちろん、人文系の高学歴の学生たちを中心として、高邁な理想について非常によく考えている若者もいるのは世界的趨勢だ。ただ多くの若者はそうではない。

高市首相は、フェミニズムという価値に邁進したりしない。「女は虐げられている」「私は女性だから、犠牲になっている」というところから話を始めない。いわないからこそ、多くのひとに支持されるのである。

「アンチ高市」が盛り上げる「高市人気」

むしろ、高市首相を女性差別的な視点で見ているのは、高市氏を批判している側ではないだろうか。

「高市支持はたんなるアイドル人気」
「なんの能力もない」
「媚びてる」
「仮病をつかっている」
「介護をしているなんて、嘘じゃないか」
「(内閣の女性は皆が)子どもを産んでいないからわからない」
「ルックスが……」

こうした発言は、SNSでなされているだけではなく、ときには高市政権に批判的な識者が堂々とおこなっている。

こうした発言に接したひとはどう思うか。

「高市さんがかわいそう」
「総理大臣でも、女性だとこんなことをいわれるんだ」

高市首相人気を盛り上げているのは、高市首相を批判している側なのではないか。それは一度立ち止まって考えてみたほうがいい。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授

1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人