災害は「いつか起こるかもしれないこと」ではなく「今日明日にも直面し得る現実」――。「防災立国」を目指して「防災庁」が設置される今年、改めて企業や家庭における「防災」はどのような観点から進めるべきか、ポイントを整理した。

11月に「防災庁」が発足 「防災立国」の実現へ

激甚化する気象災害、発生率が高まっているといわれる巨大地震のリスク。「災害大国」の日本では、この30年余り、阪神・淡路大震災や東日本大震災、噴火、豪雨、台風と、数多くの自然災害が猛威を振るってきた。その教訓によって災害対策は着実に進歩してきたが、備えに対する認識が十分とはいえない部分があるのも事実だろう。そこで、国難級の災害に対しても死傷者や避難者を大幅に低減させ、必要な国家・社会機能を維持し、また平時からの事前防災の徹底などを図ることで「防災立国」を目指す――その中心となるのが、今年11月に発足する「防災庁」である。

防災庁は「防災全体を俯瞰的に捉え、産官学民のあらゆる力を結集し、中長期的視点から我が国の防災の在り方を構想するとともに、徹底した事前防災、発災時から復旧・復興までの一貫した災害対応の司令塔となる組織」であり、内閣直下に設置される。

その果たすべき役割は、主に次の三つに整理される。まず、「①防災に関する基本的政策・国家戦略の立案」は、「これまでの災害に対する中長期的視点を踏まえた定期的かつ十分な検証」「多様な経験と高度な知見を基に、あらゆる事態を想定し、起こり得る被害を先読みした防災の基本政策・国家戦略の企画・立案」。次に「②徹底的な『事前防災』の推進・加速の司令塔」は、「各主体の連携による地域レベルでの具体的なシミュレーションに基づく災害リスク評価、計画企画・立案の推進」「各主体による事前防災対策の抜けや漏れ把握、分野横断的な関係者間コーディネートや平時からの実施勧告等による事前防災の推進(建物等の耐震化、防災まちづくりと復興の事前準備、スフィア基準等を踏まえた避難生活環境の抜本改善等)である。

そして「③発災時から復旧・復興までの災害対応の司令塔」は、「政府災害対策本部の運営や国全体の被害状況把握など災害初動体制の構築」「被災自治体のワンストップ窓口として被災者のニーズを俯瞰的に把握」「過去の災害のノウハウをいかした継続的・包括的な被災地伴走支援体制の構築」としている。

備えの有無によって経済被害に大きな差

こうして国としての取り組みが大きく動き出す中で、企業の状況はどうだろうか。大規模災害などの発生によって企業の事業活動が停滞すると、自社だけにとどまらず、サプライチェーンの途絶によりその影響は広範囲に及ぶ可能性がある。内閣府が公表した経済被害としては、首都直下地震で約95.3兆円、南海トラフ地震で約292.3兆円と想定されている。「令和7年版 防災白書」によると、事業継続計画(BCP)の策定率は大企業76.4%(令和3年度の前回調査では70.8%)、中堅企業45.5%(前回調査では40.2%)と増加傾向。策定中を含めると大企業は85.6%、中堅企業は57.6%(内閣府「令和5年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」より)との結果だった。

内閣府が作成したパンフレット「企業の防災対策・事業継続強化に向けて~切迫する大規模地震を乗り越えるために~」では、「会社を守るための取り組み」として、大きくヒトとモノの安全確保を図る従来の企業防災活動「防災対策」と、顧客への供給を継続する経営戦略としての「事業継続」の二つの取り組みがあるとしている。

「防災対策」の具体例としては、事業所の耐震化、オフィス家具・機器の転倒防止、人命の安全確保(避難経路/救命救助)、二次災害防止(出火/落下/飛散/浸水)、安否確認、役割・体制(指揮命令、被害確認)、教育・訓練の実施、食料・医薬品、トイレなどの備蓄などが挙げられている。

「今できる備え」を着実に進めることの効果は大きい。例えば内閣府が東日本大震災、熊本地震の被災企業を対象に実施した「令和元年 事前対策が事業に与える影響」のアンケート調査結果では、「耐震化(免震制震含む)」によって「物的損害額の低減が図れた」と回答した企業は92.6%、「転倒防止(設備の固定)」は90.1%だった。また、社会全体の経済被害額も防災対策の有無で大きく異なってくる。首都直下地震の場合、防災対策をしなければ経済被害額は前述のように約95.3兆円と想定されるが、出火防止などの二次災害対策を施せば約67兆円になり、二次災害対策+耐震化で約50兆円まで低減することができるという(内閣府:平成25年12月首都直下地震対策検討WG)。

有事のことを想定して「自助」「共助」を意識する

日本が防災力をさらに高めていく上で、やはり出発点となるのは一人一人の意識の向上だろう。「令和7年版防災白書」では、防災・減災のための具体的な行動として、地域の災害リスクを理解しておくこと、家具の固定や備蓄などによる事前の備えを行うこと、また、時系列で整理した自分自身の避難行動計画(マイ・タイムライン)の作成などが記載されている。こうした「自助」への知識は一定程度浸透してきたものの、一方では実施率が頭打ちの傾向にあることも懸念されている。背景には、災害の被害状況を報道などで見聞きするものの、「自らが被災者となる実感」となかなか結び付かないという心理があるだろう。

自助とともに、「共助」に意識を向けておくことも欠かせない。広域での大規模災害が発生した場合、公助だけで全てをカバーするのは難しい。阪神・淡路大震災では、生き埋めになった人の約8割が家族も含む自助や近隣住民らの共助によって救出されているといわれる(内閣府「平成28年版防災白書」より)。日頃から地域の人々で助け合うという意識の醸成が大切だ。

言うまでもなく、災害に巻き込まれてから「備えておけばよかった」と後悔しても遅い。いつ起こるか分からないからこそ、さまざまなシチュエーションを想定しておくことが大切だ。例えば、どこかに閉じ込められた時に自分の居場所をどうやって知らせるか。避難所で過ごすことになったら何を持っていたら便利だろうか。あるいは、自宅の電気が使えなくなった際に役立つものは――。災害対策の第一歩は「関心」を持ち、想像力を働かせることが重要だ。

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