妻は「世間の常識」の代表
【阿川】養老さんは奥さまと結婚なさって、何か変わりましたか。
【養老】女房はきちんとしてるんで、もう僕の教育になってますでしょう(笑)。僕、いろんなことを考えて書いたりするけど、そういうときに女房に相談してもしょうがない。だけど、女房を見てると、世間の人ってこうだなってわかる。非常に常識的な、世論調査みたいな人だから(笑)。
【阿川】奥さまが世間代表(笑)。どういうところが?
【養老】何してもちゃんとしてる。お茶をやってるから、社会的なつきあいの能力もあるし。
【阿川】私、今回、はじめて奥さまにお会いしたのに、まったく壁を感じなくてスーッと溶け込めちゃったのが不思議で。
【養老】そういうつきあい方ができる人なんですね。僕は性格が偏ってますから、考えることも偏っちゃう。だから、女房みたいな人がいないとね。そこからあまり遠くに行くとマズイなという判断材料として。
【阿川】失敗したこと、ありますか。
【養老】けっこうありますよ(笑)。
【阿川】世間とではなくて、奥さまとのことで「ああ、女房はこう感じてたのか。そうは思わなかった」とかいうことは?
【養老】僕のいちばん悪い癖は、あらかじめものを考えること。でも、女房のことなんか考えたって意味がないって何となくわかってきたから、もう考えない。
【阿川】そんなきっぱりと……。
【養老】まあ、さんざん懲りたからね。結婚ってある程度大人じゃないとダメですね。
【阿川】経験者は語る(笑)。
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士。解剖学者。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。95年、東京大学医学部教授を退官後は、北里大学教授、大正大学客員教授を歴任。京都国際マンガミュージアム名誉館長。89年、『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞。著書に、毎日出版文化賞特別賞を受賞し、447万部のベストセラーとなった『バカの壁』(新潮新書)のほか、『唯脳論』(青土社・ちくま学芸文庫)、『超バカの壁』『「自分」の壁』『遺言。』(以上、新潮新書)、伊集院光との共著『世間とズレちゃうのはしょうがない』(PHP研究所)、『子どもが心配』(PHP研究所)、『こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~』(扶桑社)など多数。
