医師だった母親は、着物姿で診察していた

【阿川】養老さんも似た人を好きになっちゃったりしました? おつきあいした数多くの女性たちを振り返ってみると。

【養老】そんなこと考えるのは暇潰しだと思うんで(笑)、あんまり考えたことない。訊かれるまでは……。

【阿川】今、訊いてるんですってば!(笑)

【養老】ハハハ、そんなに簡単に答えが出るもんじゃないですよ。ただ、おふくろと女房が関係があるなと思うのは、僕はうちのおふくろって死ぬまで着物姿しか見たことがないんです。

【阿川】着物で診察してらしたんですか?

【養老】診察室にいようが、往診に行こうが、着物ですから。下駄履いて。その上に白衣着てると、患者さんが「割烹着着てるみたいだ」って。

【阿川】アハハハハ。

「銀座ママ」に感心したワケ

【養老】前にね、京都出身のママがやってる銀座のクラブに行ったら、着物の日なんてのを決めてて、女の子が全員着てたんですよ。僕、はじめてその店に行ったとき、「何でこんなに田舎のババアを集めたんだ」と思ったわけ。ママはやっぱり着こなしが見事ですけど、不思議だなと思ってハッと気がついたのは、ママ以外は動きがダメなんだ。普段から着慣れてないのがバレる。

銀座商店街の裏通り
写真=iStock.com/Free art director
※写真はイメージです

【阿川】着物はそうですね。

【養老】うちの奥さんはそこに破綻がないんですよ。

【阿川】奥さまとはどこで知り合われたんですか。

【養老】家内は店をやってたんです。そこで着物で働いてて、様になる人だなあとパッと目に飛び込んできた。おふくろが働いてるのと同じだから、僕にはまったく違和感がなかったのね。

【阿川】なるほど。

【養老】ところが、そういう人って滅多にいない。着物だと晴れ着を着た感じ、特別になっちゃう。そうすると違う人種みたいな気がして、それにはつきあい切れないなと。

【阿川】養老さんもお母さまと違うタイプを理想としつつ、やっぱり似たところがある方にホレちゃったんですね。

【養老】そういうところはあるね。