それでも高い評価を得られる医師になる方法
専門医が不要になることはないが、その数が縮小する可能性は大いにある。内科の診断もAIによって格段に効率化が進めば、今まで10人が必要であった業務が5人で済むようになる可能性は高い。一方、外科においては、極めて近い将来ロボットが外科医に置き換わるということはないものの、徐々に外科医の仕事を代替していくだろう。
遠隔操作によるロボット手術が大学病院で日常的に行われる未来はそう遠くない。こうした時代においても高い評価を得る医師は、独自の技術を有している医師か、新しい医療を開発する研究力を備えた医師になるだろう。
そのために私は、奈良医大の教育・研究・臨床の力を高め、後述するMBT(Medicine-Based Town)という産学連携に基づく製品・サービス・まちづくりも進めてきた。最近の「学長からの手紙」の中では、この現実を丁寧に説明し、「医師不足」という従来の認識を見直してもらうことから始めている。
そして、医師過剰時代であっても活躍できる知識やスキル、ネットワークを奈良医大が提供することを伝え、県内で医師としての第一歩を踏み出すことが、その後の医師人生を豊かにし、時代の変化に耐え得る強さを持つことにつながるのだと、保護者に向けて呼び掛けている。
AIと医学の融合を目指す拠点を設置
ここで2025年にオープンした「AIシステム医学融合イノベーションセンター」について触れておく。AI時代に適応した医師を輩出していくためには、データサイエンスや数理科学の基礎的知識の習得から医療分野への応用、システム開発に至るまでの一貫した教育・研究を実現する必要がある。そこで、奈良医大では、医学とAIの融合で未来の医療を創造する拠点「AIシステム医学融合イノベーションセンター」を2025年に開いた。同センターでは、段階的に教授選考を行い3つの講座を開設する。既に2講座の教授選考を終えている。
第一段階は「数理医学AI講座」である。ここでは数理モデルやAIアルゴリズムの基礎を研究し、種々の分野での研究力向上の土台を築く。第二段階は「応用システム医科学講座」で、基礎で得た知識を臨床データ解析や地域医療課題の解決に応用し、院内実装までを視野に入れる。

