NHK大河「べらぼう」が全48話で完結した。歴史評論家の香原斗志さんは「最終回付近の大胆な展開を除けば、歴史ドラマとして非常に優秀だった。特に吉原の描き方は、美しさも怖ろしさも強烈に伝えてくれた」という――。
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「べらぼう」は「歴史ドラマ」としても優秀だった

NHK大河ドラマは、一般に「歴史ドラマ」と認識されている。その証拠に、脚本の段階から専門家が時代考証を行っている。つまり、史実に即しているか、時代状況に合致しているか、というチェックが行われている。

もちろん、ある時代に生きたある人物について、具体的にわかっていることはかぎられているから、ドラマは基本的に、とりわけ細部についてはフィクションの積み重ねにならざるをえない。しかし、それが当該の時代の空気や政治的および社会的状況、人々の考え方などに即しているかどうかが問われると思う。また、まちがいがない史実に反する描き方をしても「歴史ドラマ」の枠から外れてしまう。

極端な話、織田信長に男女平等を主張させたり、豊臣秀吉が天王山の戦いで明智光秀に敗れたことにしたりすれば、もはや「歴史ドラマ」ではない。大河ドラマは子供もよく見ており、視聴者の歴史意識の形成にも無視できない影響をあたえるので、私自身は、描かれる時代の歴史的状況に齟齬がなく構成されてほしいと願っている。

そういう目で眺めたとき、2025年の「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」は、蔦屋重三郎が生きた時代の空気、田沼意次や松平定信の治世下の状況が、最終回も近づいてからの大胆な展開を除けばよく描かれていた。そこで、1年を振り返って、すぐれていたと思う点を5つ挙げることにしたい。