公園に一人ぽつんと残る男の子

「お迎えといえば……」

この園長は卒園した一人の男の子のことを思い出した。

「その男の子のご両親は、お子さんが園に通っている途中で離婚したのです。どういう事情があったのかは詳しくは知りません。いずれにせよ、離婚後は父親が親権を取ったのです。その方はお迎えが遅くなりがちでしたね」

矢野耕平『ネオ・ネグレクト 外注される子どもたち』(祥伝社新書)
矢野耕平『ネオ・ネグレクト 外注される子どもたち』(祥伝社新書)

そして、園長は男の子の卒園後の様子を耳にして心を痛めたという。

父親はかなり裕福だったようで、その男の子はいつもブランド物の良い服を着ていたらしい。卒園後は毎日父親からお金を手渡されて、小学校の授業を終えた午後は友人たちと公園で遊んでいたという。しかし、夕方になって三々五々と友人たちが帰途に就くも、その男の子は所在なく一人で公園に残っている……そういう日々が続いていたとか。そして、お腹が空くと近所のコンビニでお弁当を買ってようやく帰宅する……。

そういう様子を幾度か目にした近隣の大人たちから小学校に通報があったらしい。その後、その男の子がどう過ごしているかは定かでないと園長は語る。

親が家を不在にしている小学校の低学年の児童であれば、学童などを利用するのでないか。わたしはそう考えた。

しかし、その男の子は学童にすら入っていなかったらしい。園長曰く、父親があまりに忙しくて、学童の申し込みなどの情報をひょっとすると持ち合わせていなかったのが原因として考えられるということだった。