とにかく「普通にして欲しい」

不登校は、不登校自体が第1の苦しみであり、味方や支えを失うことが第2の苦しみとなります。「親にどうしてもらいたい?」と尋ねると、「不登校を怒らないで欲しい」「学校に行けない自分を哀しい目で見ないで欲しい」などと言います。そして、結局はみんな「普通にして欲しい」と言います。その普通とは、「学校へ行っていた時と同じように接して欲しい」ということであり、「登校しようがしまいが、同じように愛して欲しい」という意味です。

不登校を直接なくす努力を熱心にすればするほど、事態は悪化しやすくなります。このような状況を、森田療法の創始者の森田正馬は繋轆橛けろけつと呼びました。綱で杭に繋がれたロバが束縛から逃れようとしてグルグル歩き回った結果、綱が杭に巻きついてどんどん短くなり、遂には全く身動きができなくなる有様を表しています。必要なのは巻きついた縄、もつれた紐をほどく作業です。不登校をなくす努力を止め、学校に行こうと行くまいと親子関係をどう豊かにするかを親子で話し合えるようになると、敵対していた親子が同じ方向に向かって歩み始めます。

食事をする家族
写真=iStock.com/filadendron
※写真はイメージです

充電が終われば子どもは勝手に動き出す

村上伸治『発達障害も愛着障害もこじらせない もつれをほどくアプローチ』(日本評論社)
村上伸治『発達障害も愛着障害もこじらせない もつれをほどくアプローチ』(日本評論社)

学校に行こうが行くまいが、自分は親に愛されていると感じられる環境で十分休めた子には、エネルギーが充電されます。十分に充電された子は、勝手に何かを始めます。しばらくはゲームばかりだったりもしますが、もっと楽しいことを始める子が多いです。逆に、ゲーム等から離れられない場合は、本人が周囲から責められる状況が続いていたりします。

好きなことを始めた子は、どんどんエネルギーが出てくるので、見ていても楽しいです。ある母親は息子が料理に興味を持ったので、褒めておだてて料理を任せるようになりました。そうすると母親としても助かるため、素直な気持ちで子どもに感謝します。すると親子の間で好循環が回り始めました。「仕事から帰ってきたら、御飯ができているんです。とっても助かります。先生、今あの子が学校に行き始めたら、私は困ります」と言って苦笑しました。その後、その子は登校を再開しました。

実際には、再登校以外の方向で、元気になる子が多いです。別の方向で元気になった後に、通信制などに行き、気が付くと働いていたり大学生になっていたりします。