存在感を放つ「学歴フィルター」
就職コンサルタントである福島直樹氏の『学歴フィルター』も、企業による学歴差別の実態を暴くルポであり、学歴(主に学校歴)によって就職という人生のフェーズにしかと分断が存在する様相を描いています。学歴フィルターないしは「ターゲット大学」=「特定の大学層の学生に対して特別な施策を行なう重点採用を実施している企業」と呼ばれるスクリーニング(選抜)が行なわれている割合で言うと、この本のなかでも参照されている、日本最大級の人事ポータルサイト「HRPro」の実施した調査(2017年実施)によれば、社員数1001名以上の大企業ではじつに56%だと言います。
というわけで、学歴論争のなかでも、学歴で賃金に差がつけられることの正当性を検討する議論は、先行研究も踏まえて、大枠が見えてきたでしょうか。学歴というものが、本人の努力と実績=「能力」だけでは獲得可能なものではない以上、世間で言われるとおり、学歴でその後の「もらい」を割り振っていくことに疑いをもたない社会というのは、どの道、問題があると言えそうです。


