また、昨今ではソーシャルメディアの普及も見逃せない。ソーシャルメディアとスマートフォンの組み合わせによって、ネットはリアルと地続きのものになり、現実の空間で起きていることがリアルタイムで共有されるようになった。ツイッターなどで「渋谷が大変なことになっている!」といった情報が拡散していけば、交通の便のいい大都会でもあるし、あちこちから人が集まってくるのではないか。

さらに、なぜメディアがこれほどまでにサッカー報道を行い、視聴者の熱狂を呼び起こすのかという点についても見ておかなければならない。背景にあるのはスポーツイベントの商業主義化だ。己の肉体ひとつで競技にのぞむことができたのは過去の話。現在ではトレーニングや競技そのものに高いコストがかかるし、国際マッチともなれば遠征旅費などの負担がのしかかる。

ロス五輪以降、世界のスポーツイベントの商業主義化が進んでいる。大規模化によって開催都市の持ち出しが大きくなったことや、メディアのグローバル化による受け手の広がりがその背景にはある。

商業主義化とは、具体的にはスポンサー企業の募集と、試合の放映権料収入の形をとって現れる。南アフリカ大会の放映権料は日韓大会の倍以上の額になっており、急速に放映権ビジネスが拡大していることをうかがわせる。

当然、それだけの額を支払うテレビ局にとっては、試合中継のCM放映権料は重要な収入源になるし、それゆえ高い視聴率を確保することが必須になる。試合だけを淡々と放送するのではなく、試合開始の1時間以上前から番組をスタートし、事前情報や選手のこれまでの活躍をドラマチックに紹介し、「絶対に負けられない戦い」であることを強調するのは、そうした商業的な事情によるところも大きいはずだ。