前回、「ヒット現象の数理モデル」の肝といえる数式を紹介しました。私たちはこの数式に、ブログ書き込み件数のデータや映画の興行データ、宣伝費などのマーケティングデータを入力してシミュレーションを繰り返し、「ヒット現象の数理モデル」を使って映画の需要予測ができるという結論を導き出しました。

そして「ヒット現象の数理モデル」分析によって、どのくらい前からキャンペーンを張れば最も効果的か、あるいは映画なら公開後、商品なら発売後にどのくらい宣伝を続ければよいかも計算できるとわかってきました。数理モデルを使えば、発売直後のブログの反応からキャンペーンの内容を修正することも可能です。これらはすべてデータを使ってシミュレーションした結果であり、もとになるデータが入手できたからこそシミュレーションができたともいえます。

ブログを中心にした「ヒット現象の数理モデル」分析を行うときに必須なのは、日々の変化を表す日時ごとのデータです。

「ヒット現象の数理モデル」は時間依存の数理モデルで、1日ごとの変化の度合いでどんなマーケティング施策がどのような効果を生んだかがわかります。逆にいえば、関連の日次データなしに効果は測定できません。

もしあなたがある商品やサービス、イベントなどのマーケティングを担当していて、「ヒット現象の数理モデル」をマーケティングに活用したいと思うなら、関連の日次データの取得から始めなければなりません。手順としては、まず担当している商品やサービス、イベントに類似した成功例のデータを集めます。

(1)商品なら1日ごとの販売実績や売り上げ、イベントであれば1日ごとの参加人数、(2)日次のマーケティング施策、(3)ブログのエントリー数の日次推移。これら3つについてできるだけ詳細なデータを集めましょう。たとえば販売実績に関しても、男女比や年齢別などでデータを集めれば、より対象を絞った施策を検討できます。