ヤマトホールディングス会長 
瀬戸 薫 

1970年、中央大学卒業後、大和運輸入社。82年大和運輸はヤマト運輸に改称。2004年常務。05年ヤマト運輸はヤマトホールディングスに移行。06年社長、11年会長。

権限委譲の風土のうえでグループ力を活かすため、センターソリューションやJSTが始まった。その結果、どの階層においてもグループ横断的で自己完結的なタスクフォースが組まれるという、入れ子状組織が生まれた。2つ目の特徴だ。

各グループ企業内では効率化を図りつつ、顧客に対してはサービスの幅を自在に広げてカスタマイズし、価値を最大化する。自分たちで価値を生み出せるので当事者意識が高まる。その過程で、「サービスが先、利益は後」「顧客の立場で考える」といったヤマトのDNAが共有される。こうして全員経営により、第一線から本社に至るまで、どんな規模でも最適なソリューションが生まれる。

一方、新事業創出の市場戦略を見ると、リコール対応支援、返品・交換、館内物流と、共通してニッチ市場に焦点をあてている。ヤマトHD社長の木川眞が明かす。

「事業は大きな尺度でやるとぼけてしまう。そこで、ニッチな市場にセグメントを絞り、オンリーワンの事業を生み出す。すると他社も参入し、市場規模が広がるので、差別性を打ち出してナンバーワンになる。同じ100億円の収益なら、1000億円規模の市場でシェア10%取るより、200億円の市場でシェア50%をねらう。それがムカデの足です」

差別性を生み出すため、グループ力を動員し、顧客の困りごとにワンストップで対応する。同時に、事業の差別性を1つのコンセプトで定義して発展の方向性を示し、サービスを周辺へと広げていく。これがオンリーワンからナンバーワンを目指すヤマト流の新事業創出法だ。

それにしても興味深いのは、グループの機能の組み合わせ次第でまごころ宅急便から、グローバル調達支援、リコール対応支援、エリア内物流と幅広いサービスが生まれることだ。