ヤマトホールディングスは、2019年までにノンデリバリーの領域で100の事業を持つことを目標に据え、その構想は「ムカデの足経営」と名付けられている。事業の芽は現場にこそある。「6万人のセールスドライバー」×「トップのご用聞き」によって次々と生まれている新事業を取材した。

膨大な急務を専門家が一手に引き受ける

有望な案件は事業化し、分社化し、ムカデの足を増やしていく。その足を、2本紹介しよう。ヤマト流の新事業創出の仕方が明らかになる。

1つ目は「人命」に関わる事業だ。

リコールに対応する「緑のブレザー部隊」の胸に刻まれた「リコールサポートサービス」のエンブレム。

ヤマトグループに、緑のブレザーの制服を着た部隊が誕生したのは、07年10月のことだった。胸には「リコールサポートサービス」と刻んだエンブレム。メーカーのリコール対応のすべての業務をサポートする。リコール発生時には、告知、消費者からの回収依頼の受け付け、代替品の配送、製品回収と保管、回収状況の把握……と膨大な業務が発生する。依頼企業の窓口となって、回収プランを立て、グループ各社とJSTを組んで対応するのが緑ブレザーの部隊で、自ら「コンダクター(指揮者)」を名乗る。

「その製品が家庭に置かれたまま、万が一、事故が起きて、生命に関わるような事態が発生するのを回避するため、一刻も早く回収する。それが使命です」

ヤマトマルチメンテナンスソリューションズのリスクマネジメントカンパニープレジデント、清水淳二はそういって胸を張る。入社20年間でグループ6社を経験。人脈を活かし事業を立ち上げた。

「リコールによる大量の製品回収の案件が現場から多く上がっている」。清水が役員から事業化の命を受けたのは07年2月。その1、2年前から有名メーカーの製品に起因する死亡事故が相次いで発生。メーカーに対し、事故発生を知った日から10日以内に監督官庁へ報告するよう義務づける法改正が5月に施行予定だった。従来はグループ各社が個別に案件に対応していたが、それらを集めると必要な機能がすべて揃った。