日本は将来に向け、少子高齢化、空洞化による国内産業の衰退など大きな「困りごと」を抱えている。ヤマトホールディングスは、セールスドライバー6万人のネットワークを生かした新事業で、これらの「困りごと」に次々と立ち向かっている。

孤独死を目の当たりにしたドライバーの思い

1人暮らしの高齢者が「ご用聞きボタン」(写真下)を押すと、コールセンターが注文を受け、買い物などを代行してSDが届ける。

目を閉じると、クロネコヤマトの宅急便に関わる2人の人物の顔が浮かぶ。1人は、岩手県南西部の山深い町、西和賀町で11年11月末の猛吹雪の日、取材の合間、一緒に熱いそばをすすった相手だ。

「うちのドライバーたちはね、雪の日、車で行けなければ、歩いて運ぶんです」

ヤマト運輸岩手主管支店営業企画課課長の松本まゆみは、この日、自身が始めた「まごころ宅急便」の取材のため、朝一番で盛岡から駆けつけてくれた。荷物を届けるセールスドライバー(以下、SD)が1人暮らしの高齢者のため、買い物支援と見守りを行う。「まごころ宅急便を全国で商品にしたい」。その眼差しには強い決意が秘められていた。

もう1人はその1カ月前、気温30度を超すマレーシアの首都クアラルンプール郊外の自動車教習所で会った若者だ。

「ヤマトはワンファミリー。みんな、セイム、同じ目標でガンバッています」

現地法人マレーシアヤマトのSD、アマッド・ザキ・ビン・アジザン。通称ザキはその日SDたちが安全運転の技能知識を競い合う社内コンテストに参加するため、リゾート地のペナン支店からやってきた。「この国でも宅急便はナンバーワンになる」と語る笑顔が印象的だった。

西和賀とマレーシア。宅急便をめぐる2人のそれぞれの物語をたぐると、これから数年先のヤマトの近未来像が浮かび上がる。それはある言葉と響き合う。