まごころ宅急便の生みの親・松本まゆみ氏。

もし、どこかに連絡すれば、孤独死は防げ、3日も経過することはなかったのでは。自らを責め続けた。判子をもらうだけがSDの仕事ではない。自分たちにできることはないか。夢の中でも思い詰めたのか、半年後、朝4時ごろ目が覚めるとアイデアがひらめき、夢中で書き留めた。それが企画書となった。が、上司からはなかなか承諾を得られない。思いあぐね、新聞で知った福祉専攻の大学教授に手紙を出した。何カ月かして返事が来た。「試験的にやってみましょう」。

09月3月、実証実験開始。県の社会福祉協議会(以下、社協)が毎日、1人暮らしの高齢者宛てにメール便でお知らせを出す。手渡しするSDが体調確認を行い、報告をあげる。細かな情報収集が好評だったが、1カ月で終了。「2度目の長いトンネル」(松本)に入る。

1年後、社協関係者の東京での発表会に参加した際の出会いが事態を打開する。

「うちの町を何とかしてほしい」。西和賀町社協事務局長の高橋純一だった。1週間後には町の食堂の2階に寝泊まりし、調査に明け暮れる松本の姿があった。

高齢化率43%は県内1位。80%近い地区も。共同浴場に一緒に入り話を聞いた。みんな買い物に苦労していた。週1回、移動販売車が来る地点まで往復12キロ歩くお年寄りもいた。「弁当1つでもワンコインで届けられますか」。高橋の要請を受け、10年9月、社協と連携したまごころ宅急便がスタートする。

登録した1人暮らしの高齢者から社協に依頼が入ると、職員が町のスーパーで買い物を代行し、SDが届ける際、「見守りシート」に確認項目を記入、社協にFAXする。料金は通常より低め。集荷と配送を同じSDが同一地域で行うため何とか収支が合い、「赤字にならなければいい」と判断した。

「初日に一番不便な地区のおばあちゃんがバナナを買って近所に分け、私にもくれた。自分で買い物ができる幸せってあるんだ。胸が一杯になりました」(松本)