――安倍政権は、その柱の1つに“成長戦略”を掲げています。

「成長産業を育成する際のキーワードは『規制緩和』『規制改革』だと思います。規制緩和によって民間の活力をいかに引き出させるかが、とても重要です。安倍政権で規制改革会議が復活することは大変いいことではないでしょうか」

――日本において期待されているのはどの分野でしょうか。

「農業であったり、医療介護であったりと、成長の可能性を秘めている分野は多いです。我々は成長分野と思われる事業領域のマーケティングからファイナンスまで一気通貫で行うプロジェクトチームを10年に発足させた。それが、昨年には「成長産業クラスター室」となり、新エネルギー、水、環境、資源を成長拡大事業として選定したのです。こうした部分はかなり進みましたが、農業や医療介護以外にも、教育産業など強い産業に育っていく可能性があると思います。やはり競争がイノベーションを生むと思いますね」

――4月から全国銀行協会(全銀行)会長行として、銀行業界を引っ張っていく立場になります。

「今年の金融界全体のテーマは、“いかに日本経済の活性化に寄与するか”に尽きます。成長産業を育てる、企業を育てる、こうしたことを金融界としてどうお手伝いできるのか。4月にはまた別のことをいうかもしれませんが(笑)」

――邦銀の国際的なプレゼンスが上昇したことも関係がありますね。

「昨年IMF(国際通貨基金)・世界銀行年次総会が、東京で開催されました。これは世界中から財務担当大臣、中央銀行総裁が一堂に会する非常に重要な会合です。

この場で私も海外の金融機関、政府、中央銀行の方々と数多く話をさせていただきましたが、邦銀に対する海外からの強い期待を感じました。一昨年も米国ワシントンでの年次総会に参加しましたが、今年は我々に対する期待が一段と強まっています。

金融マーケットの拡大に寄与し、邦銀の助けを必要とする国々の要望に応えることが大切で、我々の担う役割の大きさ、責務の重さを強く感じています」

三井住友銀行頭取 國部 毅 
1954年、東京都生まれ。埼玉県立浦和高校卒。76年東京大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。ペンシルベニア大学でMBA取得(ウォートンスクール)。2002年財務企画部長、04年経営企画部長、09年取締役専務執行役員を経て、11年4月より現職。「個人金融資産1500兆円をどう有効活用するかは大きなテーマだと思います」
(児玉 博=インタビュー&構成 宇佐美雅浩=撮影)
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