藤野が新しい店づくりをするにあたって、非常に大きな影響を受けた施設が、韓国の仁川国際空港なのだという。


(PANA=写真)

「飛行機のトランジットの関係で、偶然仁川空港に行きました。空港内を眺めて感じたのは、仁川空港に来る人には、日本の地方からのツアー客が多いということだった」

日本からの直行便よりも仁川を使って乗り継いだほうが安くなる場合があり、多くの海外ツアー客が仁川を経由する。

「それを見てこれは東京駅に似ているなと感じ、ジッと旅行客の動きを注視していました。そこで気づいたのは『時間消費』という考え方。ただ単に買い物を楽しむのではなくて、時間を使うことも含めて楽しむのです。無料で韓国のおもちゃをつくれるコーナーがあったり、時間に余裕がある人は、周辺の観光ができるツアーまであった。

東京店の地下に『パパブブレ』というテナントに入ってもらい、連日大行列ができています。『パパブブレ』では販売するキャンディーを楽しそうにつくっているところを全部見ることができます。『時間消費』という考え方を今後も重視していきたい」

東京駅の大丸は知っているが、お弁当を買ったことはあっても上の階まで行って服を買ったことはない。こういった声を聞く、と藤野は言う。百貨店の売り上げの要はやはりファッションだ。12年11月の全国百貨店業界の売り上げシェアの約30%を占める食料品だが、利益率はファッションに比べるとかなり低いのだという。

「お客様が購買する中で、買いやすく、生活において一番身近なものはやはり食です。『大丸といえばお弁当』というイメージがありますが、増床でまずは大成功をおさめました。今後は、そこから少しでも多くのお客様に、どうやって上のフロアでお買い物していただくか。これが今後の課題です。

乱暴な言い方をすれば、東京店は『百貨店』じゃなくてもいいと僕は考えています。百貨店のいいところは残しつつ新しい可能性をお客様の目線で探っていく。それが僕の役目だと考えています」(藤野)

(文中敬称略)

(原貴彦、大野真也、小倉和徳、小原孝博=撮影 PANA=写真)
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