安倍内閣の支持率が62%と鰻上りだ。アベノミクスなどの政策が国民から高く評価された結果だ。米国との関係改善や、好戦的な中国を牽制する外交政策もおおむね国民から支持されている。
その安倍外交を支えているのが谷口智彦内閣官房内閣審議官(内閣広報室)だ。谷口氏は東大法学部卒。「現代コリア研究所」や日経BP主任編集委員を経て米ブルッキングズ研究所研究員に就任。その後外務省外務副報道官、同参与、双日総合研究所上席研究員などを歴任した変わり種。今年2月、安倍氏の推しで内閣審議官に就いた。
谷口氏は外交・安全保障に詳しく、安倍内閣の内閣官房参与になった谷内正太郎元外務事務次官とも懇意。谷内氏らとの対談を収録した『同盟が消える日-米国発衝撃報告』ほか多数の著書がある。
「安倍氏は首相就任直後の昨年12月、プラハに本拠を置く国際NPO団体『プロジェクトシンジケート』に『アジアの民主主義、セキュリティー・ダイヤモンド』という英語の論文を寄稿しました。この中で安倍氏は、中国が東シナ海の領有権を既成事実化しようとし、南シナ海についても“北京の湖”にしようと企てていると指摘。中国の海洋覇権を防ぐために日本、米国ハワイ、豪州、インドが連携し海洋権益保護のためのダイヤモンドを形成すべきだ、と主張しています。この論文は谷口氏が書き、首相がゴーサインを出したものだといわれています」(外務省関係者)
首相は今年1月、東南アジアを歴訪し、インドネシアで「日本外交の新たな五原則」という外交政策を発表。海の安全と日米同盟を守ることが日本の国益だとし、インドネシアなど東南アジア諸国との連帯の重要性を強調、中国の海洋進出に脅威を抱く東南アジア諸国と連携して“ダイヤモンド”を強化しようという内容だ。
「この五原則を書いたのも実は谷口氏だといわれています。また1月28日の安倍首相の国会所信表明演説にも谷口氏が絡んだとされます。外務省では“谷口氏はどういう権限で外交政策に関わっているのか”と不安視しています」(同前)
安倍氏は谷口氏に加え、谷内参与、さらに外務省の反対を押し切って首相が一本釣りした兼原信克内閣官房副長官補(前外務省国際法局長)らを活用して官邸主導の外交を推進する構え。今後、外務省との軋轢が生じる可能性もある。