ソニーが保有する不動産、株式などの資産や事業の売却を加速させている。その動きからは、「必達目標」(加藤優最高財務責任者)に据えた2013年3月期の連結純損益(米国会計基準)で5年ぶりの黒字に向け、闇雲に走る姿が浮かび上がる。

事業収益の復活は道半ばなのが現状で、裏返せば14年3月期に黒字を目指す屋台骨のテレビ事業の回復までは、身を削る資産・事業売却との追いかけっこが続く苦しい経営を強いられそうだ。

同社は2月28日、テレビ、オーディオなどの事業部が入る東京都品川区のJR大崎駅前にある自社ビル「ソニーシティ大崎」を、不動産投資信託(REIT)の日本ビルファンド投資法人など2社に、1111億円で売却したと発表した。13年3月期に営業利益段階で410億円の売却益を計上する。不動産の売却としては、今年1月に米国本社が入るニューヨークのタワービルを11億ドルで売却したばかりだった。保有株式も、医療情報サイト運営のエムスリーやディー・エヌ・エー(DeNA)の株式を、それぞれ売却した。

ソニーは同期の連結営業損益を1300億円の黒字と見込み、前期の赤字(672億円)からの脱却を目指している。しかし、テレビやデジタルカメラなどの主力製品の販売目標は相次いで下方修正を余儀なくされており、円高修正の流れも現段階で収益面への寄与に乏しい。このため、昨年の化学事業売却に続いて、一連の資産の売却が収益改善を繕っている面は否めない。1300億円の営業利益見通しは、いわば見せかけに映る。

一方で、同社はソネットの完全子会社化や米ゲーム会社の買収、さらに新規事業分野に位置付ける医療機器事業の強化を狙ったオリンパスに対する出資と、矢継ぎ早に中核・新規事業分野への積極的な投資にも踏み切っている。

収益拡大に直結しにくい資産・事業に関しては、平井一夫社長は「いろいろ見直していかなければならない」と語っており、さらなる資産・事業の売却の可能性を滲ませる。その意味で、テレビ事業の再建と中核・新規事業分野の強化を、資産・事業の切り売りと天秤にかける経営からは当面抜け出せそうにない。