新規事業に取り組むうえではどんなことに気を付けるべきか。税理士の菅原由一さんは「どんな市場で、どれくらいの収益を得られるかが重要だ。その点では、コンビニの出店戦略が参考になる。同じチェーンのコンビニが目と鼻の先に建っているのは、『競合店との物理的な距離』よりも『商圏の境界線』を見て新規の出店を決めているからだ」という――。

※本稿は、菅原由一『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

夜の繁華街にあるファミリーマート
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まずは商圏内に自社チェーン店を増やす

新規事業を考える際に重要なのは、どんな市場で、どれくらいの収益を得られるかです。競合の多い市場はレッドオーシャンであり、シェアの奪い合いや価格競争が起きます。かといって競合が少ない市場は需要も小さい可能性が高く、事業として成立するかどうか不安です。

その点で参考になるのがコンビニの出店戦略です。街を歩いていると、同じチェーンのコンビニが目と鼻の先に建っているのを見かけます。これはドミナント戦略とよばれるものです。ドミナントは「支配的」や「優勢」という意味の言葉で、商圏内にチェーン店を増やすことにより、他のチェーンが出店しづらい支配的な状況をつくることができます。

具体的な効果としては、まず商圏内に自社チェーン店を増やすことで、自社チェーン店を利用する人を増やし、認知度も高められます。コンビニは最近、プライベートブランドをつくって差別化を図っています。ナショナルブランドの飲み物やお菓子などはどのチェーンで買っても大きな差はなく、そのような需要を取り込むために、商圏内にチェーン店舗が多い方が有利なのです。

また、同チェーンが近くにあることで商品の搬入が物理的に効率化できます。人手が足りないときに店舗間での人の調達もしやすくなります。

物理的に近い場所にあっても、商圏が同じとは限らない

個別店舗の収益で考えると、同チェーンとはいえ、目と鼻の先にコンビニができるのは不利といえます。商圏内のコンビニ利用者は一定ですから、限られたシェアを奪い合うことになります。

じつはここにポイントがあります。コンビニ同士が物理的に近い場所にあっても、商圏が同じとは限りません。例えば、国道には上りと下りがあり、これらの商圏は別です。わざわざ車をUターンして反対車線のコンビニに行こうと考える人は少ないからです。

新規出店を考える際に重要なのは、競合店との物理的な距離よりも、商圏の境界線を見ることなのです。