なぜ零細企業なのに家賃が高い場所に本社を構えるのか

事業を成功させるためには、取引先、顧客、仕入れ先、金融機関などからの信用を獲得することが大事です。信用は実績の積み重ねですから一朝一夕では築けません。

しかし、ある方法によって短期間で信用を築くこともできます。それは、立地の良い場所に本社や拠点を構えることです。

それを実践しているのが大手企業です。大手企業の本社は都市部に集中しています。また、ほとんどの企業がターミナル駅に近いアクセスが良い場所にオフィスを構えています。

利便性と家賃は比例するためコスト(固定費)は増えます。しかし、その見返りの1つとして信用を獲得しているのです。

高い家賃を払っているという事実は、収益が安定していることを間接的に示し、取引先にとっての安心材料になります。就職や転職を考えている人にとっても、都心部に本社がある会社は印象が良く、入社したいという気持ちが高まります。

スタートアップの70%は「都心4区」に集中している

信用獲得以外の実質的なメリットとしては、複数の電車が乗り入れている駅や、駅から近いオフィスは通いやすく、働く条件が良いほど応募者が増え、優秀な人を採用しやすくなります。

また、都市部やターミナル駅の周辺には大手企業が集まっているため取引先との行き来も便利です。

他社との接点が増え、それが新たな事業機会になることもあります。例えば、丸の内や霞が関などの都市部では、その地域に拠点を持つ企業の交流会などがあり、そのような場に参加することで接点が生まれやすくなります。また、大手企業との接点を求めるスタートアップも都市部に集まりやすく、資料(帝国データバンク調べ)によると、東京都内にあるスタートアップの7割は、港区、渋谷区、千代田区、中央区に集中しています。

都市部はスタートアップ同士の横の人脈づくりにも有利ですし、そのような点でも都市部にオフィスを構える(高い家賃を払う)価値は大きいといえます。