バーゲンセールの行き先は地獄

ところがお客さんも気がつくよ。実はバーゲンセールは目玉商品しか安くないんだと。他の商品は安くないよと。すると目玉商品だけを買って、他は買わないってことになる。すると、これは本当の出血です。

そこで考えた。どうも値段一本で勝負するのは先が見えているし、矛盾だ。行き着く先は地獄だと。本当にお客さんは安いものだけを求めているのだろうか。本当はそうじゃないのじゃないか。実は、安さオンリーで勝負するというのは、客をよく見ていない商売なんじゃないか。一方的にスーパーが値段を下げて、これでもかこれでもかとお客さんを脅しているだけじゃないのか……。

本来、小売店はお客さんの欲しいものを置くところでしょう。今はとくに、お客さんのニーズが多様化している時に、安売りだけでいいのかと。同じ靴下、あるいは下着でも色、柄、素材、高級品、いろいろある。お客さんの欲しいものは何も安いものだけとは限らないと。客のニーズに合ったものを的確に置くことが、やっぱり小売業の基本ではないか。その上で、値段をいくらにするかというのは、むしろお客さんと相談だと。

値段というのはある意味で客とのコミュニケーションの道具なんだというわけ。値段を手段にして客と店がコミュニケーションをする。その中で、このあたりがいちばんいいんだなと決める。これを「値ごろ」だというわけです。

スーパーマーケットの店内の「Sale」の表示
写真=iStock.com/VTT Studio
※写真はイメージです

マイペースを掴めるかどうか

これはある意味で、マイペースで走ろうということですよ。これまでは他のスーパーと比べて安売り、安売りで競争してきた結果、それは自滅の道だとわかった。共倒れするしかない。そこで、いかに自分のペースでやるか、それが「値ごろ」というマイペースをつかむことになったわけでしょう。

実はニチイに限らず、今、この不況の中で企業を取材していくと、もう一度、自分の会社の、わが商売はいったい何なのか、ということを考え直そうとしている会社が多くなってるんです。たとえば証券業界でもいま株価が低迷していて、しかも出来高が決定的に少ない。これは投資家、つまり客たちの証券会社や株式市場への不信感、あるいは裏切られたといういきどおりが強まり、みんな株を買わなくなっているからだ。なぜこんなことになってしまったのか。

バブルが弾けたということもある。しかしバブル時代に証券会社がともかく売り上げを上げる、シェアを伸ばすということだけに奔走して、客に株の押し込みを図ったことに原因がある。これは、よく考えると、証券会社が売り上げを上げることに血まなこになる、必死になるということ自体が自滅への道だったんだ。証券会社の売り上げというのは、株の買い替え手数料なんだ。株を売っても、客が買いっ放しじゃ全然儲からないわけです。