「イグジットは大企業の手法」という大きな誤解

日本では、イグジットは大企業のもので、小規模なスタートアップには無関係だと思っている人が多いのですが、それは違います。

プライム市場にはイグジットの仲介会社が数社、具体的には(株)ストライクと(株)日本M&Aセンターがあります。それらの実績を見ると、1億円以下の仲介が大半です。つまり、中小零細企業のイグジットのほうが多いのです。

レコフデータの調査によると資本金1億円以下の中小企業が当事者となるM&Aの成約件数は2021年だけで3403件に上るそうですが、これは私の感覚を裏付けています。

それにも関わらず「イグジットは大企業のもの」というイメージがついてしまっているのは、単にメディアで報道されるのが大企業のイグジットであるというだけの話です。小さい企業のイグジットにはニュースバリューがないので報道されませんが、実は数はとても多いのです。

そして、イグジットがうまくいくかどうかに企業の規模は関係ありません。大切なのは、利益が出ているかどうかです。売上ではなく利益です。

遠い世界の話だと思っていたイグジットが身近なものに思えてきましたか? あなたも、数年後にはイグジットを成功させているかもしれませんよ。

これは余談ですが、イグジット仲介も私が定義する「スモールビジネス」に相当します。コストが小さいため、売上の7割近くが利益になるというわけです。これらの会社は極めて高い給与で知られていますが、それも当然の話です。

明るい見通しがある上り調子のときに売る

イグジットは勢いが大事です。メディアでは大企業の大規模なイグジットばかりが話題になるため、ずいぶん時間をかけるイメージがあるかもしれませんが、実は小さい企業のイグジットでは瞬発力が大事です。

前も書いたように、現代社会は何が起こるかわからず、それが大きくビジネスに影響します。新型コロナウイルスにウクライナ侵攻など、状況は突然変わるので、長期的な計画を立てるのが難しいと言わざるをえません。

つまり、私が定義する「いい会社」とは、「経営計画と戦略をフレキシブルに変えられる企業」ということになります。

「でも、イグジットを成功させるには長期的な事業計画が必要では?」と思われるかもしれませんが、その必要はありません。事業計画は1年分で十分です。もっと言えば、事業計画以前に、決算書が1年分だけあれば売却が可能なのです。

ここだけの話、私が民泊管理会社を売却した際には決算書さえありませんでした。

設立1年目の決算前に売却が決まったからです。このときは翌年の試算表だけで売却が成立しました。

イグジットには3〜6カ月くらいの期間が必要です。だから、数カ月先くらいまでの明るい見通しがある上り調子のときに売るべきです。安定飛行に移ってからではなく、離陸して高度を上げているときに売るべし、ということです。

しつこいようですが、現代は一寸先は闇です。成長し、安定期に入ってから売るようでは手遅れで、高い価値はつかないでしょう。

会社を作ってから売るまでの3年間は全力疾走をしてください。

犠牲にするものは多いかもしれませんが、それだけ得られるものも多いのです。数年間我慢するだけで何千万円ものキャッシュが手に入るなら、がんばる価値はあるのではないでしょうか?

飛行機に乗ろうとしている人のイメージ
写真=iStock.com/Nutthaseth Vanchaichana
※写真はイメージです

人生はせいぜい100年です。私は以前から、40歳でのリタイアを目標にして走り続けています。40歳になったら、イギリスで好きなことをやりながら家族とのんびりと暮らすつもりです。

みなさんだって、そのくらいのささやかな夢を実現できるのです。そのためならば、数年間くらい、全力でがんばってみませんか?