なぜ部下を前にした朝礼でモタつくのか

「○○について話そう!」

と決めておいたのに、いざ人前に立って話し始めたら違うことを話してしまった……。

こんな経験はありませんか?

指導先の企業に、とても緊張しいな管理職のAさんがいました。

その企業では、部下に社会情勢を把握させるため、毎朝の朝礼で管理職から新聞の情報を伝えています。

Aさんは、通勤の電車で新聞に目を通し、伝えたい内容をピックアップして朝礼に挑んでいました。

しかし、その朝礼に同席させていただいたところ、何とも残念な話し方をしていました。

「えっと……あれ? どこだっけ……」とページを探すところからモタついている上に、漢字が読めなかったり、噛みすぎてオロオロしているではありませんか!

これでは、通勤電車でしっかりと準備しているがんばりが、まったく報われていません。

Aさんに話を聞いてみたところ、朝礼が始まるまでは「このページのこの記事を読もう」と覚えていて、声に出してスラスラ読めるそうです。

しかし、いざ話すとなると、読みたい記事のページ数や、どこからどこまでを読もうと思っていたかが、わからなくなってしまうとのことでした。

プロでも記憶に頼らず、メモや台本を用意する

そこで、Aさんには、新聞記事を読みながらトークをするニュース番組の動画を見てもらいました。

丸山久美子『緊張しても「うまく話せる人」と「話せない人」の習慣』(明日香出版社)
丸山久美子『緊張しても「うまく話せる人」と「話せない人」の習慣』(明日香出版社)

その番組では、拡大された新聞記事がパネルに貼られていて、それをアナウンサーが読み上げながら紹介していきます。

記事の文章をよく見ると、読み上げる部分にだけ赤線が引いてあったり、読みにくい漢字にはフリガナが書いてあります。

話すプロのアナウンサーでさえ、このように工夫をしているのです。

緊張すると、記憶力は低下します。

細かいメカニズムの説明は省きますが、これには自律神経や脳が関わっているそうです。

自律神経も脳も、簡単に操れるものではありませんね。

だからこそ、プロのアナウンサーのように、記憶がとんでも大丈夫な工夫をしておくことが大切です。

話すときは、記憶に頼るのではなく、メモや台本を用意するようにしましょう。

その後のAさんは、読みたいページに付箋を貼り、読みたい記事を蛍光ペンで囲むようになりました。

読みたい部分にも線を引き、読めなくなりそうな漢字にはフリガナを書き込む習慣をつけていったのです。

さらに、会議で資料を説明するときにも、この習慣を応用するようになりました。

今では、朝礼でも会議でも、とても流暢に話しています。

まれに、メモを見ながら話すのはNGというルールが設定されている場を見かけます。

そういったルールがない限りは、緊張しながらがんばる自分を支える意味でも、メモや台本を用意してみてくださいね!

【関連記事】
【第1回】大谷翔平も例外ではない…「日本人の8割超が緊張するタイプ」話し方のプロが緊張を克服するなと言う深い理由
銀座ママが「LINEを交換しよう」と聞かれたときに必ず使う"スマートな断り文句"【2021編集部セレクション】
「茶道をおやりになりますか」では「おや?」と思われる…相手の趣味を聞く"上品な質問フレーズ"
「役不足なので不安です」「お求めやすい商品です」「ご進言ください」は大間違い…正しく言い直すと?
本当に出世するのは「仕事がデキる人」より「デキそうな人」…「顔の印象が他人を動かす」という残酷な真実