高齢者に影響力を持つ媒体に協力を仰ぐ

ポイント2:説得の技

次にどのように説得をするかということだが、これには、

①他人に説得してもらう
②一度に説得しようとしない

という2つの技法を提案したい。

①他人に説得してもらう

人は、自分が尊敬している人の話しか聞かない。多くの親は、自分の子どもは何歳になっても「こども」だと思っている。

だから、なかなか自分の子どもの言葉に素直に耳を傾けられない。そこで、「他人に説得してもらう」のだ。

とはいえ、誰が説得してくれるのか。

例えば健康診断。健康診断は、視力、聴力など、老いを突きつけられる。これが免許返納へのきっかけの一つとなることもある。

例えばYouTubeにあがっている「高齢者が引き起こした悲惨な事故」的なニュースや特集の収録番組を見せるのも一つ。

親がよく見る番組や、好きな司会者、タレントさんが登場している番組で取り上げられたりすると、免許返納に向けての大きな説得力となる。

とにかく自分の言葉だけで説得しようとせず、テレビといった高齢者には強力な説得力を持つ媒体に協力を仰ぐといい。

テレビのリモコンを操作する人の手
写真=iStock.com/Hanafujikan
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たった1日で説得できると思わず、長期戦で

②一度に説得しようとしない

ある日突然「わかっちゃいるけどやめられない」ことを、突きつけられて、素直に受け取れる人は少ない。これは高齢者に限ったことではない。

だから時間をおいて、何度も説得材料を提供するのだ。

先に紹介したように、高齢者が引き起こした交通事故についての「YouTubeの特集」を見せたり、ネットニュースの過去記事を見せたり。

そしてそこからの「お父さんもそろそろ、人ごとじゃないよね」、「何かあってからでは取り返しがつかないよね……」など、ポロッと話す。

そんな話題を振ったり、意見を求めたりしながら、免許返納に向けての心の準備をしてもらうのだ。

聞いていないようでいて、これが時間をかけて効いてくるもの。

最初からそう構えて根気よく、親自身の気持ちに寄り添いながら、親を免許返納の話題に慣らしてゆく。

そして、親が車を必要とする時は自分が運転を申し出たり、あるいは遠く離れて暮らしているならば、「タクシー」「電動自転車」などの代替案もある。「車を運転しなくても生活できる」ための、具体的な策を提案するのだ。