親子関係に亀裂を入れずにすむ説得方法

とはいえ、急いで親に免許の自主返納を勧めたところで、「はい、はい、分かりましたよ」「ちゃんと免許を返納するから心配しないでね」などと、聞き分けのよい親はまずいない。

怒って反発する、あるいは「そうだね……」とは言いながらも、さまざまな言い訳を並べて、免許返納を先送りしようとする。それが普通の親だ。

親のためを思って熱心に免許の自主返納を説得したことで、親子関係に亀裂が入ってしまうケースもある。

私がYouTubeで配信している、悩み相談番組『大愚和尚の一問一答』には、「親に免許の自主返納を勧めたいが、どのように親を説得したらよいか」という相談も届く。

そこで、免許の自主返納に向けての「親の説得の仕方」を心技体に分け、3つのポイントを紹介してみたい。

親に「恐れる心」を育てて納得してもらう

ポイント1:説得の「心」

まず始めに、説得する側が心折れてしまうことがないよう、心得を書いておきたい。

慚愧ざんきという言葉がある。

慚愧とは、仏教が説く心所しんじょと呼ばれる人間心理の一つで、「慚」は、恥ずべきことを恥じる心のこと。「愧」は、恐れるべきことを恐れる心のこと。

釈迦しゃかさまは、この「慚愧の心を育てなさい」、さもなくば、世の中から道徳と秩序が失われ、カオスになってしまうと説かれた。

親の認知力、予測判断力、運転操作能力が衰えて、危なっかしい運転をしているにもかかわらず、そのことを本気で「恐い」と思っていないならば、それこそが「恐ろしい」。

老いは誰にでもやってくる。認め難いけれども、必ずやってくる。老いて能力が衰えていながら運転を続けるのは恐いことだと知って、自分自身にも親にも「愧」を育てること。